潮江と久々知の情報交換





賑わいを見せる城下町。
港が近くにあるせいか多くの南蛮人が闊歩していて、土産物屋や日本名産と銘打つ店が幅を利かせている。
そんな人の出入りが激しい店には目もくれず、身なりの良い武士は影に隠れるように建っている小さな茶屋の縁台に座った。

「団子一つ」
「あいよっ!」

何度目か分からない来店で、もはや店員には常連だと思われている。
小さな店構えの割に客は意外と多く、多少変わった行動をしようが誰も気にしない。
武士は視線だけで周囲の気配を伺うと、茶を啜った。

「月」
「更級」

背後に座る女性が含み笑いで答える。
無言のままの武士に、女性が続けた。

「狐が昨日やってきまして、どうやら花菖蒲は枯れてたみたいですよ。今雷の子と一緒に確認に行ってます」

その言葉に、武士は後輩の同じ顔をした二人を思い浮かべる。
彼らが追っているものが外れなら、こっちに巻き込んでしまえばいいか。
確か彼らの班長は、

「では蜜柑も食っちまうか。あのへんには狸がいたな」

自身の同室。そして彼らと自分達を繋ぐ伝令役の後輩は、背後に座る女性と同じクラスだ。
女性は苦笑を零す。

「ええ。でも狸は確か、蹴鞠で遊んで……」
「蹴鞠も巻き添えだ」
「ええ……」

犬猿の仲だと言われるライバルも巻き込んでしまえばいい。
邪悪な笑みを浮かべる武士に、女性は苦笑する。

「……狸に噛まれますよ」
「構うものか」

ぶうぶうと文句を言う姿が浮かんだのか困った様子の女性に笑う。
多少仕事が多くなったところで、結局目的のものさえ見つかればいいのだ。

「では、連絡しておきますよ」
「頼んだ」

それだけ言うと、武士は銭を置いてその場を去った。

(人使い荒いなーもう……)

女性は内心で呟く。
しかしその銭が男の分だけではないことに気付いて、更に余り分が豆腐団子と同じ値段であることに頭を抱えた。

(ああもうくっそ! これだから潮江先輩は!)

さすが、班長を務める先輩は。
今回他班との調整役で、精神的疲労が蓄積されている後輩へのフォローもばっちりである。





――
狐=三郎
雷の子=雷蔵
花菖蒲=敵の城
枯れている=望み薄
蜜柑=仙蔵
狸=勘右衛門
蹴鞠=留三郎

適当!笑




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