食満くくとトンカツ

*現パロ




包丁の背で軽く叩いた豚肉に塩コショウを振って、小麦粉、溶き卵、パン粉につける。
温まった油に入れると、じゅうじゅうと良い音がした。

「久々知、キャベツ切っとけ」
「はーい。てかサラダ買ってくりゃいいのに」
「こないだのロールキャベツの余りが残ってんだよ」
「ああ」

冷蔵庫から余ったキャベツを取り出した久々知は、慣れた手つきで軽くキャベツを洗って包丁を握る。
トントン。リズムよくキャベツが千切りにされていく。
段々きつね色に染まっていく豚肉の加減を確かめる。油がもったいないのでほとんど揚げ焼き状態だ。ひっくり返すと、またじゅうじゅうと音がする。

「はい、完成ー」
「おう。あとはメインだけか」
「ですね。先輩トンカツって何かけます?」
「何って、ソースじゃねえの?」
「俺おろしポン酢のが好きです。さっぱりして」
「ああ。じゃあ俺もそうしよっかな」

からりと揚がったトンカツをキッチンペーパーの上に乗せる。
冷めたら切って、千切りキャベツの上に鎮座だ。
ちょっと手を抜いたインスタントの味噌汁と、炊き立てのご飯。
久々知がお盆に乗せて持っていこうとするので、慌てておろしポン酢を取り出す。

「あ、忘れてた」
「おいおい。ドレッシングは?」
「俺はいらないです」
「そ」

久々知曰く、トンカツの箸休めに野菜がちょうどいいのでドレッシングはむしろ無い方が美味く感じる、だそうだ。素材そのものの味、というやつか。
こいつが薄味嗜好なせいか、最近は俺も似てきた気がする。とトンカツにかけたおろしポン酢を冷蔵庫に仕舞いながら思う。

「「いただきます」」

トンカツを頬張ると、さくり、と音がした。
確かにソースよりさっぱりしていて美味い。炊き立てのご飯も進む。

「あーやっぱ手作りっていいなあ」
「いつも作ってんだろ」
「俺のために作ってくれるのがいいんですって」
「あー。分からんでもないな」

同意してやると、大層機嫌の良い後輩はインスタントの味噌汁を啜って、満足そうに笑った。





――
食満くくに食べたいものを食べてもらうシリーズ。(本当に続ける気なのか……)
というか思い出しながら書きましたがトンカツの作り方ってこれで合ってたっけ。
というかこれ食満くくって言っていいのか……いや、カプ詐欺に関しては今更か。



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