酒盛り仙くく

*お酒は成人してから





すっかり酒の回った兵助はご機嫌で、うっすら赤い頬でニコニコと笑っている。
割と表情は豊かな子だが、自分の前でそんな警戒心の溶けた表情をするのは珍しい。
そういう仲ではあるが普段ことあるごとにからかっている自覚があるだけに、仙蔵は内心で苦笑した。

「お前、飲みすぎじゃないのか?」
「そんなことないですよぉ」
どことなくあどけない口調で笑って、兵助はもう一杯、と猪口に酒を注ぐ。

「飲みすぎだ」

猪口をそっと取り上げると、兵助は子供のように唇を尖らせる。

滅多にないそんな可愛らしい仕草に、思わず宥めるように頭を撫でた。
前髪を梳けば、兵助は気持ちよさそうに目を細めて仙蔵の掌に頬を寄せる。猫みたいだ。
ともすればごろごろと喉が鳴る音が聞こえてくる気がする。

「せんぱいのて、すきです」
そしてふにゃりと微笑む。
「……ああ、」
思わず息を呑んだ。

女装での忍務を任されることがあるため火薬を扱う割に手の扱いには気を付けている。
どれだけ見た目が美しい女でも、手一つでバレてしまうことがあるからだ。
元々肌が白いので、長く細い美しい指だとはよく言われていたが、努力の甲斐もあって男にしては肌理が細かく手触りも良い。

手を褒められることなど慣れている。
けれど、こいつの言葉はどんなものだって、まるで媚薬でも入っているかのように甘く痺れて耳に届く。

「すき」

零れるように紡がれた言葉がひどくあどけなくて。
自分より背もガタイも良い男が、どうしてこんなに可愛らしく、扇情的に映るのか。

頬に移した掌で唇をなぞれば、兵助がゆったりとした動作でその手を掴む。
なにをするのかと思えばそのまま自分の指を絡めてぎゅっと握った。
その嬉しそうな表情ときたら。

「……頼むから、他の男に同じことをしてくれるなよ……」

さしもの仙蔵も、撃沈である。





――
手って淫靡ですよね。(突然何を言い出すのか)
細くて長い指って憧れます。なにしても様になりますよね。
仙蔵は絶対手ぇ綺麗だよなあと思って。
兵助は意外と男らしい手だと思う。寸鉄使うしね。

結構読み返すとこっぱずかしいので勢いで上げます。
マジで最近ねっとりしたエロ書ける人尊敬する。




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