なんでもない勘くく

*兵助と勘右衛門同室設定




「勘右衛門、まーたお前そうやって!」
「いいだろー結局兵助がやってくれんだからぁ」
「お前なあ!」

ああまた怒られているなあ、と思いながら五年ろ組の三人はそそくさとその場を後にした。
普段学級委員長としてしっかりしなければならない、と自制している勘右衛門は自分達の前では酷いくらいにだらける。
その度に兵助に怒られているのだが、本人はそれすら楽しんでいる節があるのでどうしようもない。

八左ヱ門曰く「兵助に怒られんのが良いんだと」だそうで、勘右衛門の拗らせ具合に三郎はドン引きした。ちなみに雷蔵は「甘え下手だねえ」とのんきにお茶を啜っていた。大物である。



「ったく、いい加減にしろよお前……」

二日でどうしたらこんなに汚れるのか、という程荒れに荒れた部屋を片付けながら、兵助は呆れたようにため息を吐く。
布団から手の届く範囲に様々な物を置いてだらだらを満喫している勘右衛門は、兵助の様子にえへへと笑った。

「なんか兵助奥さんみたい」
「俺はそんなだらけまくりの旦那いらんぞ」
「仕事はしっかりするよぉ」
「山田先生の奥さんみたいになってやる」
「……ええ、それは辛い……」
「じゃあほら手伝う! てかまず起き上がれお前は!」

べしりと勘右衛門の頭をはたいてから掃除を再開させる。
文句を言いながらも片付けを手伝ってくれるのだ。兵助はこまめに掃除をするタイプなので、この部屋が汚い原因の十割が勘右衛門である。

そんな恋人の甘やかしが心地好くて、勘右衛門は毎回兵助を困らせる。
全く、どうしようもない。

「あー、おれ、兵助がいなくなったら生きてけないなあ」

唐突に言われた言葉に、兵助はちらりとも勘右衛門を見なかった。

「大丈夫だよ。人はそう簡単には死なない」

にべもない返答に、勘右衛門は大声で笑った。


(ほら、またそうやって甘やかす)




――
勘右衛門ってなんか執着すごそう、っていう勝手なイメージ。




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