現パロ(文)くくと勘右衛門

*文次郎不在





好きだとか、愛しているという言葉は、あまり口に出して言われたことがない。
口に出すと途端に陳腐に聞こえて、薄っぺらく思えるから嫌なのだと言われたことがある。
大事な言葉は、大事な言葉だからこそ大切に閉まっておくのだと言われた気がした。


「……お前は、それでいいの?」


心配そうに見てくる勘右衛門にふと笑う。
それでいいから、おれは三年もあの人と付き合っているのだ。


「一応聞くけど、自然消滅狙ってるとかないよね」
「それだったら別れる方が早いだろ」
「うんまあ、兵助ってそういう人だよね」


忙しくて一切連絡してこなくなっても、電話やメールに返事がなくても。
半年くらい会えない日が続いても、それでも。
それでも、おれは充分満足している。

久しぶりに会った時の微笑。
眠る時、おれを抱きしめる腕。
作った料理を食べる時、「いただきます」と「ごちそうさま」という声音。
おれに触れるてのひらの温度。
ふとした瞬間の、おれを見つめるまなざし。

それはきっと、おれしか知らないことだから。


「まあ、愛されてる自覚はあるからな」
「わーごちそうさまー」


棒読みの勘右衛門に笑う。

言葉なんかなくても、分かることはたくさんある。
滅多に会えないからこそ、会った時にとてつもない幸福感に包まれる。
あの人が大切で仕方がないと思う。
おそらく、あの人も同じ。

そんな惚気は、おれだけが知っていればいいこと。





――
スキンシップって大事だよね。(唐突)
言葉にしてしまうと、どうも嘘っぽいというか軽く聞こえる時ありますよね。
だからこそ掌から伝わることもある、という話。
咳き込んだ時に背中さすってもらったり、どこか痛くなった時に触れてもらったりしたら妙に落ち着くことってありません?
「手当て」の語源ってそこらしいです。
口下手な人も、ハグとか握手で案外伝わることってあるかもしれませんよ。




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