六年と五年と夜空の花火






どぉん! と大きな音が響く。
その大きな音に、上級生は勿論下級生も思わず飛び起きた。


「敵襲か?」
「だが、敵の気配は無いぞ」
「なんだ……?」
「とりあえず下級生の様子を見に行くか」


動き出しそうとした最上級生の長屋に一つ下の後輩が現れる。
しかしその数は一人足りず、四人も意味ありげな笑みを浮かべているために六年生は少し引く。
五年生のこの笑みの裏には大体ろくなことがない。


「敵襲ではないですよー」
「下級生も落ち着いてます」
「まあ、いろいろ尋ねたいことはあるでしょうけど……」
「とりあえず、外に出てみましょ!」


安全は保証するんで! という勘右衛門の言葉に半信半疑ながら、とりあえず敵の気配は無いので従うことにする。
妙なことを企んでいるなら相手をしてやればいいだけだ。
五年生相手の組手や実習は必要以上に張り切る最上級生である。

そうこうしているうちにまたどぉん! と大きな破裂音が響いた。


「……本当に大砲じゃないんだろうな?」
「違いますよー。敵だったら僕ももっと慌てますって」
「それもそうだな」


苦笑して外に出る。
月のない真っ暗な闇の中で、下級生どころかくのたま達までそらを見上げていた。
その表情は一様に楽しそうな、高揚した笑顔。
何事かと一緒になって上を見上げると、丁度空にひゅうという音と尾を引くような長細い火が上がる。
どぉん! と爆発したのは、色とりどりの花だった。


「……花火か」


ぼぞりと呟いたのは誰だったか。
気付けば下級生達と同じような顔をしている先輩に、五年生は顔を見合わせて笑う。


「委員会で火薬が余ったそうですよ」
「じゃあ花火でも作るか、となったらしくて」
「あ、先生方の許可はいただいてるそうなのでご心配なく」
「むしろ夜中にサプライズしちゃおうぜ! とノリノリだったそうで」


学園長が喜々として提案する様子が目に浮かび、六年生は揃って苦笑した。
なんだかんだ言って、他の先生方もお祭り騒ぎが好きなのだ。
そんな人達に育てられたわけで、つまりは自分達も。


「初夏の花火もいいものだな」


仙蔵がぼそりと言ったことに六年生は笑った。
困ったように笑っていた五年生も、今は一緒になって火薬委員の花火を見上げている。
赤、青、黄色、緑、紫、白。
夜空に咲く、色とりどりの花。


「……」


戦乱の世であることを忘れるほどに、綺麗な花だった。






――
最近暑いですね。夏ですね。花火ですね。お祭りですね。
うちでもやっとエアコンの掃除をして、割と明け方までドライガンガンです。
一番好きな季節は冬ですが、夏は一番生き物が活動的になるような気がしてそれはそれで好きです。暑さは本気で天敵ですが。汗が。汗と虫が。

一瞬でパッと散る花火を見て、六年生や五年生は何を思ったんでしょうね。
特に、最後の夏となる六年生は。
綺麗と同時にどこか切ない花火は、いろんなことを考えさせてくれますね。





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