魔の廊下その後





夕刻。
食堂では五年生五人がいつものように仲良く和気藹々と夕食を摂っていた。


「えっ、そんな面白いことしてたのかよ! 俺も呼んでくれりゃよかったのに」
「お前委員会だったじゃん」
「それで喜三太のナメクジの芸見に行くの断っただろ」
「それはそうだけどさあ」


話の内容は今日の出来事について。
委員会のあった八左ヱ門とは反対に特に用事もなかった五年生四人は、喜三太の誘いでナメクジの曲芸を見に行っていたのだ。
そのついでに乱太郎きり丸しんべヱに巻き込まれ、一緒に曲芸を見に来ていた仙蔵、小平太、喜八郎と共に安藤先生 をおちょくった の邪魔をしたのだった。
結果的に最初に聞いていたように安藤先生は乱きりしんを叱ることは無く、練り物を前に固まっていた土井先生をなんとかしてほしいと頼むだけだったのだが。
それでも、みんなで変装やカラクリを教師相手に仕掛けるのは楽しいもので。


「でもさー、やっぱ先生はお流石だよなあ。おれら瞬殺だったよ」
「身長以外は完璧だと思ってたんだけどねえ」
「まあ、今回は俺らの方の問題だったからな。次は騙してみせる」
「だな。俺も次はもっとメイクの腕をあげなくちゃ」


楽しそうに今回の反省会をする四人。
顛末は聞いたが細かいところは知らない八左ヱ門が、味噌汁を啜りながら首を傾げた。


「なんでバレたんだ?」
「それがさー」


勘右衛門が笑いながら言うには。


「五年生ってのは体格でバレたんだけど、雷蔵は髪がもっさりし過ぎてたのでバレて、兵助に至っては豆乳の匂いがしたからなんだよ」
「んで、三郎がメイクやったのと八左ヱ門は食堂にいたからっていう消去法で勘右衛門がバレた」
「おま……勘右衛門と雷蔵はともかくさあ」
「仕方ないだろ、休みだから豆腐作ってたんだよ」


この前約束したきり丸とのアルバイト用の、と付け足した兵助の言葉に五年生は苦笑。
なにしろ変装自体突然だったし、本来なら喜三太のナメクジの曲芸を見るだけの予定だったのだ。仕方ない、と言われれば仕方ない。


「けど、仕方ないで済ませちゃいけないことも分かってるさ」


忍とは何時如何なる時でも冷静であれ。
もしも今日のこれが教師相手ではなく敵相手だったなら、自分達はあっさり殺されていたかもしれない。バレることも前提に、誤魔化す策も練っておくべきだった。
生徒だから、と甘えてはいけないのだこの世界は。
兵助の言葉に八左ヱ門がにかりと笑い、食べ終わった盆を持って立ち上がった。


「うっし、じゃあこれから変装の特訓しよーぜ!」
「いいね! 三郎いろいろ教えてね」
「女装とかもやるか。誰が一番美人になるか競争しよ」
「それ絶対お前には勝てんだろ」
「じゃあ三郎は審判で!」


わいわいと騒ぎながら食堂を出ていく五人。
その会話を聞いて、食堂にいた六年生と教師はふと笑った。







――
どういう人選だと思ったら原作改変回でしたねえ。
八左ヱ門いねえ!と思ったら出てきたし。やっぱり五年生は四人出したら、全員出さなきゃ!みたいな使命感みたいな何かがあるのでしょうか。



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