山守の子




山の中、完全に囲まれたことが分かる。相手は手練れ、戦うにしても武器との相性が悪い者が多かった。
どうしようかと冷や汗をたらす四年生三人の耳に、潮江の舌打ちが届く。

「……久々知」

まさか残る気だろうか。田村が口を開こうとした時、この忍務中ずっと無表情だった久々知が初めて笑った。

「良いんですか?」
「ああ」

何を、理解するよりも早く久々知がその場から消える。すぐに周りから呻き声とくぐもったような悲鳴が響き始めた。

「っ、」
「四年、よく見ておけ」

息を呑む四年生に、静かな声で七松が言った。

「あれの戦い方は学びになる」

中在家も続く。そっと顔を上げると、五年生は全員表情もなく食い入るように久々知を見ていた。その真剣さに呑まれる。

久々知はするりするりと木々の間を動き、驚くほど呆気なく敵を殺していく。掌に持つ二つの鉄で、軽々と敵の懐に入っていく。
山の中は動きづらい。だからこそ戦うことを躊躇したのに、あんなにもあっさりと。
いつの間にか四年生も、真剣に久々知を観察していた。





――
豆腐の謎の段のあと興奮しながら書いたものなんですが、そのうちもっと掘り下げた話を書きたい……!と思っている。



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