久々知へのド信頼



「じゃ、それは兵助で」


上級生合同忍務。本丸潜入を選ぶ話で、さらりと尾浜が言った。他の誰も異論はないらしく、当然のように話は進んでいく。
守一郎とて久々知が優秀なことは知っているが、あまりにもあっさりしていたので驚いた。だって本丸潜入だ。いわゆる本命。忍務の要。それを六年生でも五年生の学級委員長でもなく、そして自己主張の激しい四年生すらも異論なく当然のように受け入れた。そのことに驚いたのだった。

「ああ……だって、久々知先輩は絶対失敗しないから」
「え?」

部屋に戻って三木ヱ門に聞くと、なんの気負いもなくそう言われた。絶対失敗しない?

「そうか、守一郎は知らなかったっけ」

かつて、夏休みの課題が入れ替わったことがあったらしい。一年生のものが六年生に、三年性のものが五年生に。そして久々知は、六年生の課題が当たった。
六年生の課題が当たった喜三太は城に捕えられた。五年生の課題が当たった三木ヱ門は期間内に終えられなかった。
久々知は満身創痍で、夏休み中に課題をやり遂げた。

「今度風呂で会ったら右肩見てみな。矢傷が残ってるから」
「矢傷……」

守一郎は息を呑んだ。

「元々真面目で、信頼の篤い方だったけどな。それ以来、ここぞって時の忍務の要は久々知先輩に任せることが多いんだ。今回もそう」
「なるほど」

それは見事なほど手放しの信頼だ。しかも同級生だけではない、確実に自分よりも実力が上の先輩や、守らなければならない後輩からも。
それはどれほどの重圧だろう。
しかし、久々知本人は飄々としていた。いつものように、穏やかな雰囲気を纏ったままで、何も言わず。
改めてすごい先輩だったのだと、思った。





――
改めて久々知はいろんな人からの信頼がすごいな!と思って書いたお話


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