怒られるのが怖い久々知


「兵助ぇ!!」
「ごめんなさいぃ!」

潮江と立花の自室。激怒する潮江に、久々知は涙目になりつつ全力で謝っていた。
立花の背に隠れて。

「兵助、お前またやったのか」
「わざとじゃないんですよぉ……」
「わざとだったら私も怒るぞ」

呆れつつもそのまま盾となってくれている立花に小さくなりながら半泣きで答えると、立花は眉を下げて苦笑した。
久々知がこうして潮江に叱られる姿ももう何度目だろう。最初は立花や他の六年生も叱る立場だったが、最近はもうこういうものだと受け入れつつあった。何度もこうして叱るのは、今や先生方と五年生を除けば潮江だけだ。
久々知はその有り難さを理解しつつも直せないのだからタチが悪い。

「珍しく無傷だと思ったんだが、そんなことはなかったか」
「腹に打撲、腿に切り傷だ。全く年々隠すことばかりうまくなりやがる」

苦々しく言う潮江に、久々知は更にしょもしょもと萎れていく。普段はしっかりしている優等生で、実習中は何を言われても何をされても喰らいつく負けん気の強さを見せるくせ、そのあとこうして反省している姿も嘘ではないのだから全く困った後輩だ。

「勘右衛門達にも怒られただろうが。突っ込んでいく必要なかったからな」
「うぅ……」

無茶をする。癖というよりもう性質なのだろうそれは、久々知が入学してからずっと続く悪癖と言っても良いものだった。
引き際が見極められない奴ではない。戦闘狂というわけでもない。自分の実力もきちんと把握できている。だというのに、すぐに無茶をして怪我を負う。
周りにどれだけ叱られても、結局今まで直らない。
潮江も、尾浜達も分かっているのだろう。だからこそ尾浜達は久々知をフォローするように動くし、何度だって叱る。

「ったく……しばらく大人しくしとけよ」
「はーい……」

しょぼぼんと肩を落として帰っていく久々知は、部屋に戻れば今度は尾浜達に叱られるのだろう。それでもきっと、数日後の実習ではまた無茶をするのだ。
やれやれと苦笑する立花と潮江は知らない。
あれだけ何度言っても聞かない久々知が、意外と叱られることが嫌いだということを。

(こわくない……の段に続く)







補足 24.01.25
潮江を恐れる久々知は解釈違いだったんですけど、前日に怒られたとかなら……まあ……という感じで書いたやつでした。
補足入れようと思ってずっと忘れてましたすみません。



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