何故か不穏になった鉢くく

*雷蔵が結婚してる
*未来、年齢操作
*一行だけ欠損描写
*鉢くく要素は正直全くない






「良い奥さんだな」
「当然だろう。私が認めた女性だぞ」
「はは、説得力ある」

雷蔵が結婚したという話は聞いていた。忍一本の道から半農半忍になって、住み着いた村で知り合った女性だという。勘右衛門も八左ヱ門も揃ってベタ褒めするので、そのうち会ってみたいと思っていた。
仕事が一区切りついて、暫く危険な忍務もなくて。数年ぶりに会いに行くと、偶然なことに三郎とも再会した。
雷蔵の家からの帰り道、久々の再会に、俺達は自然と一緒に隣を歩く。

「それにしても、子供までできているとは聞いてなかったな。言ってくれたらもうちょっとお土産も考えたのに」
「どうせ豆腐だろう? まだ赤ん坊は食べられないじゃないか」
「さすがに分かってるよ。そうじゃなくて、奥さんに栄養のあるもの……甘酒とか、持ってくれば良かったなってさ」
「……ああ、なるほど。甘酒なら飲み物だし、良かったかもな」
「うん……まあ、また今度持っていくよ」
「…………ああ、」

みんなバラバラの道を進んだが、運の良いことに誰も敵対することはなく。今でも手紙のやり取りは頻繁にするし、長くても三ヶ月に一度は四人のうちの誰かに会っていた。
とはいえ雷蔵やフリーの俺、派遣の勘右衛門とは違って、城勤めの八左ヱ門と忍衆を率いる三郎はなかなか会うことも簡単ではなく。今日ここで会ったのも、一年ぶりくらいになるかもしれない。

「君と会うのも久しぶりだな」
「……そうだな。一年ぶりくらいか」
「……もうそんなになるのか。月日が経つのは早いな全く」
「本当に。俺達あっという間におじいちゃんだよ」
「はは、それまで生きられたらの話だぞ」
「縁起でもないなおまえは……」

会ったのは一年ぶりでも、話し始めればあの頃と同じ空気で話ができる。変わったところもある。変わっていないところもある。それが分かるくらいに傍にいられることは、とても幸福なことだ。

「……雷蔵、幸せそうで良かったよ」
「急にどうした?」
「いや、なんかしみじみ思ってね。最近大きな仕事を終えたもんだから、みんなと会えることがどれだけ幸せなのか日々実感してるよ」
「…………そうか。そうだな」

卒業と同時に切った髪も、背中の真ん中ほどまで伸びた。
三郎はもう雷蔵の顔をしていない。
勘右衛門は指が一本欠けてしまったし、八左ヱ門は片目がない。
雷蔵だって無傷で忍を辞めることなどできなかった。
それでも、今、ここにこうして笑って隣に立つことができる。獲物を相手の急所に突きつける必要がない。警戒する必要もない。

「……なあ、兵助」
「ん?」

敵じゃない、友達なのだから。

「今日ここに来たのが、偶然じゃないって言ったらどうする」

立ち止まった三郎は俯いていて、表情が読めない。ただでさえ変装で偽物のフリが上手いのだ、三郎に騙し合いで勝てた試しなどほとんどない。
だから三郎が何を考えているのかなんて、俺に分かるはずもない。

「……ふふ、俺もなかなか人気者になったようだな?」

俺を囲んでいる気配は五つ。
隠す気もないのだろう。随分と殺気立っていた。







ーー
平和な鉢くくが書きたかったんですけども……?
途中からどんどん不穏な空気に……何故……



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