穏やかな鉢くくお題

「世界で一番、甘えたな」 title by 君想歌






1.お前には余計な言葉はいらない

「ほら、」「……ん」呆れた様子の三郎に、兵助が腕の怪我を見せる。淡々と包帯を巻く三郎からは、特になんの感情も見出せなかった。黙ったままそれを見ている兵助からも。
「もっと怒るかと思った。」八左ヱ門の言葉に、勘右衛門が呆れたように言った。「怒るのも反省するのも、無言でやっちゃってんだよ」包帯を巻き終わった三郎が、ぽんと兵助の頭を撫でた。





2.強がっていることわかっている

古傷が痛むならそう言えばいいのに。我慢したってろくなことにならないのは分かっているだろう馬鹿者め。委員会から部屋に戻ってきて、汗だくでうずくまる姿にため息をついた。今晩は勘右衛門に私の部屋へ行ってもらおう。





3.心配するなお前は可愛い

町で女の子に声をかけられるおれを見たらしい。確かに声はかけられたけど、あれは懇意にしている豆腐屋の娘さんだ。許嫁もいる。そもそもおれは、おまえ以外興味ないし、ずっとそう言ってるつもりなんだけど届いてなかった?
涙目の真っ赤な顔に笑いかける。おまえのことが可愛くて愛おしくて仕方ないよ。





4.世界で一番、甘えたな

座って本を読む三郎に兵助が抱き付いている。腹のあたりにぐりぐりと頭を押しつけて、三郎に撫でられて。逆はよく見るけど、兵助もたまには甘えたになるらしい。あんまりおれが見ていい光景じゃない気がする。気配を消して、そっと部屋を出た。





5.俺をなんだと思っているんだ!

「おまえ、雷蔵のことが好きなんだと思ってた」「いやまあ雷蔵は好きだが、君とは別だろ。君こそ勘右衛門か八左ヱ門かタカ丸さんか土井先生が好きなんだと……」「多くない? しかも男ばっかりだし」「だって豆腐屋の娘さんとかくのいちとかには興味ないだろ」「男には興味あるみたいな言い方やめてくんない? おれのことなんだと思ってるの?」「おれが一番可能性無いと思ってた。え、距離感遠くて後腐れないから私のこと選んだわけじゃないよな?」「おまえおれのことなんだと思ってるんだ!」





6.ずっと一緒にいようってことは

恋仲になると決めた時には、その覚悟ができていた。むしろ離れないと覚悟してから、手を取り合う決心をしたと言っていい。別れたとしても、その後も傍にいられるかどうか。いられると思ったから、互いに手を取ったんだ。
私達五人は、共に生きていくのだから。




7.欠点? 何それ?

嫌いなところを聞いてみたら、おまえは雷蔵かというくらい悩み始めた。豆腐を作りすぎるくらいは言うかと思ってたけど、どうやらあれは嫌いなところではないらしい。"あばたもえくぼ"ってやつか。はいはい。ごちそうさま。




8.白いお馬さんって柄じゃないが

君が困っていたり、助けを求めていたり。誰かの手を必要としているとき、おれはすぐさま君の元へ飛んでいきたい。君の肩の傷跡を見るたびに、そんな思いは募っていく。




9.まんざら悪い気もしない

「ほら、あーん」「食べられるって、それくらい」「だめだ」「うう……」「約束を守らず突っ込んで怪我した兵助くんには、どれだけおれが心配したか身をもって味わってもらいます」「うう……」「その腕治るまで世話してやるからな。勘右衛門と先生方には話を通してある」「全力だな……!?」「君の悪いところが矯正されるなら、ってみんな乗り気だったよ」「……」




10.ほら、ほら、笑っちゃえ!

たくさんの豆腐料理とか、無理に作った話題とか、背中に回された体温とか。
そういう気持ちが全部、嬉しくて、愛おしいと思うよ。





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