武器交換で一戦




終了、という善法寺先輩の声が響いて、詰めていた息をゆるゆると吐く。兵助と七松先輩の手合わせはいつ見ても何度見ても慣れない。まるで獣と獣が戦っているような、"相手を絶対殺してやる"とでもいうような妙な気迫があるのだ。他の者の手合わせももちろん緊張感はあるものの、この組み合わせほど見ていてハラハラするものはないだろう。

「あ゛ー、やりづらい! これ邪魔!」
「邪魔っておまえね、僕の武器なんだけど」
「長距離難しい……」
「余裕で振り回しといてよくいう」

綺麗に礼をした兵助は、帰ってくるなり雷蔵に得物を返しながら喚いた。完璧に使いこなしていた優等生の癇癪に雷蔵達も苦笑する。

今回の五年生対六年生の手合わせは、得物のない善法寺先輩を除いて学年内で得物を交換して行なっている。深い意味はなく、単なるお遊びの一貫。
とはいえ手合わせは本気でやるので、みんなどこかしらにかすり傷は負っている。兵助も、もちろん私も例外ではない。六年生相手に無傷でいられるわけがないのだ。

「久々知! 分かるぞ! 素手の方がやりやすいよな!」
「はい! 素手の方が動きやすいです!」
「そら苦無と寸鉄使いだからな……」
「小平太は知ってたが久々知も大概アレだな、脳筋」
「久々知もおまえにだけは言われたくなかっただろうな」

きゃっきゃと盛り上がる七松先輩と兵助に、呆れたように他の先輩方も言葉を交わす。
この2人で全員一通り交戦は終わった。もう少し手合わせをするか風呂に行くかと考えていると、八左ヱ門がため息を吐く。

「でも兵助達の言うことちょっと分かるわ。寸鉄すげえ怖い」
「そう? うまく戦えてなかった?」
「いや、一回ちょっと危なかったぞ」
「受け止めた時?」
「そう、掌すっぱり行くかと思った」
「「怖」」
「相手が中在家先輩でよかったね……」
「いや本当に」

深く頷く八左ヱ門に苦笑するが、まあ言いたいことは分からなくもない。
この場にいる全員が全員どの武器でも戦えることに違いはないが、その中でも扱い慣れているから得物というので。やっぱり他の武器は手に馴染みなく、反省点は大いにあった。

「よっし久々知! 素手でもう一戦しよう! このまま帰るのは不完全燃焼だ」
「いいんですか!? 是非お願いしたいです!」
「小平太の組手喜ぶの久々知くらいだよ」
「まあ……二人とも喜んでいるなら、いいだろう」
「では私が審判をしよう」

楽しそうに目を輝かせる獣コンビにケラケラと楽しそうな六年生。呆れつつも、私達もここから帰るという選択肢はなく。

だがやっぱり先輩の言う通り、うちの優等生は脳筋なのかもしれない。





修正 22.07.28 確認したはずなのに得物が全部獲物になってたんですけど!

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