雲の上と下(五年生)




「さーさーのーはーさーらさらー」

ふんふん歌いながら何やら手を動かしている兵助に、珍しいなと思いながら足を止める。色とりどりの紙を廊下に並べ、筆を隣にセットする。
なんぞやと暫く観察していると、向こう側から八左ヱ門と勘右衛門が笹を、雷蔵と何人かの一年生が飾りをたくさん持って帰ってきた。

「さーぶろー、早くおいでー」

バレてら。
ひょこっと顔を出せば、一年生に「わあ! 鉢屋先輩こんにちは!」と元気よく挨拶された。こんにちはと笑って返して、飾りを一つ手に取る。
こちらも色とりどりで綺麗だ。

「兵助が歌っているから何かと思えば、七夕か」
「そう! 雨だけどさ、地上で楽しむのは自由じゃん?」
「八左ヱ門と勘右衛門が笹取ってきてくれるって言うからさ」
「そしたら雷蔵が飾り作ってくれてさ!」
「作ってたらきり丸達が手伝ってくれたんだー!」

わいわい話す四人に、ちらりときり丸達を見れば苦笑いで返された。なるほど、雷蔵また不器用さんを発揮したんだな。そして彼らはそれを見てられなかったんだな。

「ありがとな、君たち」
「いえいえ、食券一枚貰えたんで」
「ランチの小鉢貰えたんで!」
「乱太郎は?」
「この間保健室がぐちゃぐちゃになったとき、片付け手伝って貰ったんで……」

不運。

「ほい、三郎も短冊書けよ」
「おお、うん」

静かに心の中で保健委員会を憐れんでいると、兵助にぽんと短冊を渡される。ちらりと見やれば、一年生は既に雷蔵達と一緒に短冊を書いたり吊したり飾りをつけたりしていた。早いな。

「君ももう書いたのか?」
「うん、"最高の豆腐を作れますように"」
「……君の豆腐は既に最高だと思うよ」
「ありがとう! でももっと良い水やもっと良い豆を使えば、もっと美味しい豆腐ができるんじゃないかと思ってさ。豆腐の可能性は無限だからね」
「……そうか」

分かりやすいというか、兵助らしいというか。豆腐だろうと忍術だろうと、とことん努力して、とことん追求していく。そんなこいつに自分達が引っ張られることも、多々ある。今みたいに。

「ふうん……じゃあ俺は、"もっと変装がうまくなりますように"にしようかな」
「ええ? 三郎はもう優秀じゃないか。学園随一の変装の達人なんだから」
「ふふん、兵助くん。変装の可能性は無限なのだよ」
「……それおれの台詞」

呆れたように言って、兵助はぷっと吹き出した。つられて一緒に笑う。

「なに二人だけで楽しそうな話してんの〜?」
「三郎書けた?」
「こっち来て飾ろうぜ〜」

雷蔵達の言葉に頷いて駆けていく。途端になんの話をしてただの願い事はなんだのと騒ぐ私達に、乱太郎達が呆れて顔を見合わせて、笑っていた。



雨の日でも、カササギが橋を架けてくれて織姫と彦星は会えるらしい。
雲の上、私達の見えないところで二人きりの逢瀬をしているのなら、こんな大雨も悪くないと思える。
雲の下の私達は、二人を思いながら私達で楽しもうか。





――
何も考えずに書いたら大惨事になりますね。文章久々にしても酷いな!笑
とりあえず五年生で七夕の話をしよう!とだけ決めたらこんなんなりました……。

この日の学園の夕ご飯は、おばちゃんがそうめんを置いて行ってくれたので各学級各学年そうめんです。
五年生が笹を食堂に置いたので、次の日には短冊が増えていました。

以上!妄想終わり!


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