再び(五い)
*転生現パロ
朝からずっとざあざあと続く大雨は、夜になってもやむ気配がない。
今日は織姫と彦星も会えないかもなあと少し憂鬱になる。いや、雨が降るとカササギが橋を作ってくれるのだったか。子供の頃に聞いた昔話も、今となっては曖昧だ。
年に一度しか逢えないのに、それすら天候に左右されるのはあんまりだな。
そりゃ仕事サボってたのはダメだけどさあ、執行猶予みたいな制度にすれば良かったのにね。
……せめてイエローカードにしない? すごい犯罪者みたいだよ。
仕事しないのはある意味犯罪だろ。でもイエローカードの方が柔らかくていいね。
まあなんにせよ、罰は下されてしまっているわけだけどね。
ちょっと今の会話全部台無しなんですけど!
いつかの下らない話を思い出す。
仲間内では誰よりも奔放な自由人のくせに、その実誰よりも仲間思いで、誰よりも優しかった一番の親友。部屋も同じで、アイツの前ではいつだって自然体でいられた。
大好きだった。
アイツは今、おれの傍にはいない。
かつての仲間達を見かけたことはある。先輩も後輩も、先生も、みんな同じ町に住んでいて、よく見かける。
それでも記憶を持っているのはどうやら自分だけのようで、おれは誰と関わることもしなかった。
最初に会うのはアイツがいい。アイツと話がしたい。下らないことで笑って、また一緒に生きていきたい。
会いたいよ、兵助。
数日前、ふと思い立って短冊を書いた。スーパーの、誰でも書いて良い小さなコーナーだ。
書いたのは『会いたい。』とただ一言。相手の名前も自分の名前も書かずに、ただそれだけを書いて見えない影の方に吊した。この大雨だ、もしかしたら流されているかもしれない。
それを見に行こうと思ったのは、ただの気まぐれ。
だけどきっとそれは、気まぐれじゃなかった。誰かが、行け、とおれの背を押したのだろうと思う。
叩き付けるような土砂降りの中、一人立っている男を見つけた。
男は傘をさしたまま、一つの短冊を手に取っている。
その表情は記憶のものよりも優しくて、柔らかい。
神様というものを、この日初めて信じてみようと思った。