仲良し五年生お題

title by 「優しさが染渡る」10mm.





01.今日はね、気分が良いの

崩れた豆腐を目の前にしているのに、兵助はニコニコと鼻歌を歌いながら片付けをしている。
どうやら食満先輩(用具委員会)に豆腐作り専用の小屋を作ってもらったらしい。

「通りで豆腐壊しちゃっても許してくれるわけだ……」
「……またやったのか君は」
「兵助がご機嫌でよかったな……」
「でもあとでもう一度謝っておきなよ?」
「はい……」



02.ふわり、ふわり

前の席に座る勘右衛門が舟を漕いでいる。
先生の話を半分聞き流しながら見ていると、突然がくりと首が落ちた。

「勘右衛門、良く眠れたか?」
「先生に怒られる夢見てましたぁ」

笑いが起きて、先生も苦笑する。
その光景を眺めながら、兵助はふっと微笑した。

(もうすぐ春だもんなぁ…)



03.忘れてしまいそう

自分の顔を忘れた、と言ってみた。
嘘ではない。実際、朝から晩まで雷蔵の顔をしているから、自分の顔を見ても違和感の方が勝ってしまっていた。
でも。

「えっ、本当に!? ど、どうする、仮面全部剥がす……?」

心底心配そうに言われるものだから、思わず笑ってしまった。
いつか本当に忘れてしまったとしても、きっと私は大丈夫だ。



04.優しさが染渡る
*矢鴨

痛みに呻く背中をさすってくれる手、温かいお粥の香り、本当に怒った声、心配そうな顔と、褒めてくれる言葉。

それが全て、あの一瞬で無くなっていたのかと思うと。



05.お気に入り

八左ヱ門が虫籠の修繕をしていた。
器用に動く手を眺めつつ、他愛も無い話をする。

「そういえば今日、三郎と雷蔵がな……」
「あはは! でもそれ兵助も……」
「ええっ! ばっかだなああいつら!」

親友達のことで、笑い合う。
そんな日常の一時。



06.貴方を、探す

「三郎いない?」
「まだ戻ってきてないよ。珍しいね、兵助が三郎探すなんて」

ひょこっと顔を出した兵助は、雷蔵の言葉にぎりりと苦虫を噛み潰したような表情をした。

「委員長会議に出席しろって言ってるのに来ないんだよアイツ! 予算の話もあるし学級委員長委員会も予算会議出ることになったんだから出席しといた方がいいって言ってるのに!」
「あー……うん……ごめん…あとで引きずってつれていくよ……」



07.存在意義

おれには何ができるんだろう、と考える。
雷蔵はみんなの穴を埋めるのがうまいし、勘右衛門は臨機応変に敵を誘導させるのが得意だ。兵助は何をやらせても一定以上のことはできるし、三郎なんて六年生に並ぶ武芸の達人なんて言われている。
なら、おれは何が得意なんだろう。勿論得意分野はあるけど、チーム戦ではいまいち生かし切れていない気がする。

「八左ヱ門、今日はありがとうな」
「え?」
「“最後まで諦めるな!”って声かけてくれただろ? お陰で諦めずにすんだよ」

勘右衛門の言葉にきょとんとしていると、隣を歩く兵助が頷いた。

「八左ヱ門は前向きだから、みんなの士気を上げる力があるんだよね。チーム戦だと八左ヱ門がいるだけで空気ががらっと変わるよ」
「分かる! なんかすごいダメダメな状況でも八左ヱ門が声かけてくれると大丈夫な気がするんだよなあ」

どうやらおれも、ちゃんとみんなを支えられているらしい。



08.君が、いない

勘右衛門が忍務で二日間ほど留守にしている。
お陰で兵助は朝からずっとい組の連中につきっきりで悪戯しても説教されないし、雷蔵と八左ヱ門もあっさりと悪戯を躱してくる。
つまらない。
勘右衛門がいれば、兵助は俺と勘右衛門に膝詰め説教してくるし、雷蔵と八左ヱ門の隙もついてやれるのに。

「不覚だ……」

私は意外と、あの狸を気に入っていたのか。



09.眩し過ぎたんだ

俺達にとって、兵助は光のようだと感じる時がある。
前向きな八左ヱ門や私を救いあげてくれる雷蔵や勘右衛門さえそう思うらしいから、事実そうなのだと思う。
暗闇に囚われそうになる僕達を救い出して、光の方へ導いてくれる。
人を殺した経験は俺と同じくらいだろうに、どうしてだかとても綺麗に見える。
そんなことを言ったら、アイツはきっと笑うのだろうけれど。

だけど、できればずっと、いつまでも、輝いていてくれよ。
お前は私達の、光なのだから。



10.一輪の花

これは決意だ、と兵助は一人笑った。
あいつらと共に、最期まで一緒にいるための誓い。

一つ手に握りしめた連翹の花を、和紙に包んで本に挟んだ。







――
連翹(レンギョウ)の花言葉…「希望」「希望の実現」


今書いている話が進まないのでりはびり。
お題遊びも結構時間かかっちゃったなー……そして私は五年が未来を共に行く話が好きすぎるな。好きすぎるからな。仕方ないな。




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