学園長対四年生の段妄想裏話





「「ぎゃはははは!!」」

委員会で顔を合わせた途端爆笑する年下二人に、タカ丸は珍しくむっつりと顔を顰める。
乱太郎きり丸しんべヱにも笑われたばかりの髪型のせいだ。今現在四年生は、学園長先生の命令により全員が学園長先生と同じ髪型になっていた。

「ど、どうしたんですそれ…!」
「にっ、にあわな……っ!」
「ちょっと! 笑いすぎたからぁ!」

涙まで浮かべて笑い崩れながら息も絶え絶えに話そうとする二人にさすがにツッコむ。
そこまで笑うこともなかろうに。若干涙目になっていると、それまで苦笑していた兵助が二人を宥めた。

「まあまあ二人共。四年生の事情があるんだよ、あんまり笑ってやるな」
「四年生の事情?」
「あれ、久々知くん知ってるの?」
「さっき守一郎に会ってね」

きょとんと首を傾げる後輩達に兵助は微笑む。

「髪型のことで喧嘩してたら偶然学園長先生が通りかかって、髪型じゃなくて勉学に集中させるために強制的にその髪型にさせられたんだろ?」
「ソウデス……っても、まあおれは付き合いもあるけど」
「一人だけ違うのは嫌だもんな」
「ああ、そこはノリたいですよね」
「さみしいですもんねえ」
「だよね〜」

とはいえ、四年生の自業自得の側面は拭えないのであって。

「まあ、暫くはそれでいるしかないでしょう、そういう理由なら」
「四年生の先輩方、発狂してそうだなあ」
「守一郎は楽しそうだったよ」
「守一郎はこの髪型嫌がってなかったもん……」

苦い表情のタカ丸に三郎次と伊助も苦笑する。
つまり守一郎以外の三人は大体予想通りということだろう。特に美意識の高い滝夜叉丸と三木ヱ門は部屋から出るのも嫌がっていそうだ。
暗い部屋で膝を抱えて溜息を吐く二人が容易に想像できてしまって、思わず顔を見合わせた。

しかし。自分達が手を貸すと、“四年生を勉学に集中させる”という学園長先生の思惑が無駄になってしまう。ここは四年生で頑張ってどうにかするしかないのだろう。
三郎次と伊助は目配せして頷き合う。
タカ丸が泣き言を言いながら自分達に助けを求めない理由も、兵助が穏やかに微笑むだけの理由も、そういうことだ。





三日後。
久々に全員で集まった委員会。仕事を終えて、元の髪型に戻ったタカ丸から詳細を聞いた。

「「可愛い髪型ぁ!!??」」
「そう! しかもあれこれやって、五人でアイデアを出し合ったのに、結局! “いつもの髪型が一番可愛いのう”ってさあ!」
「うわあ……」
「可愛さなんて求めてどうすんだ学園長先生……」

お茶を啜りながら苦笑する伊助と若干引き気味の三郎次。二人の反応にうんうんと頷きながら、タカ丸は茶請けの豆腐クッキーをパクりと食べる。勿論にこにこと三人の話を聞いている兵助の作である。
しっとりしながらも口に入れるとほろほろ溶けるほのかな甘さのクッキーを食べていると、荒んでいた心も落ち着いてきた。

「まあ、みんなでいろいろ話し合うのはちょっと楽しかったけどさ」
「あー、四年生は特に個性が強いから」
「こういう機会でもないと話し合いってできなかったんじゃないですか?」
「……そうかも」

微妙に納得のいかない表情をしつつも、先程よりも随分と落ち着いた様子のタカ丸に兵助はそっと微笑する。

四年生はいろんな術を使って、学園長先生に髪型を戻してもらおうとした。
“四年生を勉学に集中させる”という学園長先生の目的は、見事に達成したわけだ。
だがまあ、それについてはまだ気付く必要はない、と兵助は思う。
だって五年生ですら、学園長先生の思惑に気付いても、それにノる程の余裕はないのだ。先にタカ丸や四年生が余裕を持ったら悔しいじゃないか。

ほんの微かな対抗心はしれっと茶と共に飲み下して、兵助は別のことを口にした。

「ところでタカ丸さん、学園長先生と同じ髪型の乱太郎ときり丸としんべヱが四年生にやられたってメソメソしてたけど、戻してやらなくていいの?」








――
観た日に書きたかったんだけど、話がまとまらなかったので改めて。
仲良しで思惑も丸っとお見通しな火薬もいいんだけど、たまにはこういう学年の対抗心もいいよなーって。特に五年生の負けん気が強いのは公式ですし。(「五年生が一番力の入る時期」by留三郎)(セリフあやふや)

でも一番書きたかったところは、タカ丸さんの髪型見て爆笑する三郎次と伊助でした。満足!笑



19.07.15 追記
伊助ちゃんは乱きりしんの髪型を戻してもらおうと思ってたけど学園長の可愛い髪型インパクトで乱きりしんのこと忘れちゃったってことでひとつ。

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