夏の匂い
どこまでも高く澄んだ青い空に、真っ白く大きな雲が浮かぶ。
ミンミン、ジージーと鳴くセミの声が響く。ギラギラした太陽のじわじわとした暑さに、ふわりと吹く風の心地よさが気持ちいい。
夏の匂いがする。
「あちー!」
「殺人的酷暑だってさー」
「それ去年も言ってなかった?」
「言ってた言ってた」
「毎年言われるようになるんじゃないの」
「うへええぇ……」
本気で嫌そうな勘右衛門と三郎に三人は笑う。楽しいことが好きなトラブルメーカーに見えて、季節に意外と弱点が多い二人だ。
夏といえば生き物が活動的になる季節。七夕に祭り、花火に海開き。盛りだくさんのイベントも、こうも暑くてはやってられない。
刺すような太陽の光を手で遮りながら、兵助は空を仰ぎ見る。
「でも、まあ、楽しみだよな」
七夕には八左ヱ門が竹を取ってきて、みんなで短冊を飾って。夏祭りは三郎に浴衣を選んでもらって。花火はきっとみんなで線香花火の競争をして。海に行ったら、勘右衛門がスイカ割りをし始める。流星群の日には雷蔵の解説を聞きながらみんなで屋根に上って、流しそうめんをしたらば、兵助は豆腐を流そうとしてみんなに止められる。
そう遠くない未来。きっと全部、本当の思い出になる。
「楽しみだな」
どこか遠くで、風鈴がリンと鳴った。
――
情景描写の練習をしたいなーと。思っただけです。(いつもの)
うう……一読しただけでパッと思い浮かぶ描写ってどう書くんだろうなあ……れんしゅーれんしゅー。
夏ですねー。書いたり見たりする分には好きな季節なのですが、生きていく上ではだいぶ苦手な季節です。溶けたい。冬眠ならぬ夏眠したい。(冬になると冬眠したいとか言い出す)