田村食満久々知パラレル

*たぶん平成じゃない時代パラレル、幽霊退治屋さんみたいな三人の話(適当)
*苦労人リーダー田村、面倒くさがり荒事専門食満、自由人女装癖神懸り久々知
*A型三人で集まったら面白いと思った。久々知に巫女服を着せたかった(犯行動機)
*タカ丸は委員会被りのため欠席(言い訳)
*尻切れトンボどころか始まってもいない






小さな町の隅、入り組んだ路地裏にぽつんと建っている小さな喫茶店がある。
美人のお姉さんとイケメンのお兄さんが二人で経営しているというその喫茶店は、こんな辺鄙な場所にあっても口コミと美味しい珈琲でなんとか経営難にはなっていない。
そんな変な場所にある喫茶店は、変な噂がある。



『幽霊退治を請け負っている』――という、噂が。





カラン。と綺麗な音を立てるドアベルの音に、白いシャツと黒い腰エプロンを身に着けた二人の店員が「いらっしゃいませ」と声をかける。
柔和な笑みの女性と整った顔立ちの男だ。
店内の客は二人ほどで、どちらも自分の作業に没頭している。
客は少しだけ迷うような仕草をして、席へ誘導しようとした女性店員に声をかけた。


「あの……幽霊関係の依頼なんですけど」


客の言葉に女性店員はぱちりと大きな目を瞬かせて、ふと表情を緩める。


「かしこまりました、奥の席へご案内しますね。五分ほどすれば店主がやってくると思いますので」
「……は、はい」


女性店員の柔らかい笑みに客は頬を染める。
そんな様子にまた一つ笑みを向けて、女性店員は席を離れた。
女性店員のネームプレートには『久々知』と綺麗な字で書かれていた。





「すみません、遅れまして」
「ああ、いえ」


きっかり五分後、客の元に現れたのは金髪に赤い目をした、綺麗な顔立ちの若い男だった。


「私は幽霊退治専門を生業にしている、田村と申します」
「ああ、……私は」


田村と名乗った男に続いて名乗ろうとした客を、田村はそっと制す。


「名前は人の個体を表すもの。万が一取られては大変なので、敢えて聞かないようにしているんです」


何に、とは聞けなかった。
田村があまりにも真剣な顔つきをしていたから。
客が頷いたのを見て、田村は微笑を浮かべた。


「では、本題へ参りましょうか」





***





ここから少し離れた町に、「幽霊屋敷」なるものがあるらしい。
入った者は二度と出られない、幽霊に連れて行かれてしまうと噂されている。
そこに、客の友人が面白がって行ってしまった。
もう帰ってこなくてひと月になる。
心配になって自分も行ってみたけれど、何故かその場所に辿り着けない。
どうしようかと必死で手がかりを調べていたら、この場所の噂を聞いた。
藁にも縋る思いで、今回の件を依頼した。


「――と、まあ経緯としてはこんな感じですね」
「なーんか嘘くさいな」
「というか、その町って片道半日もかかるとこだろ? 遠くない?」
「そんな遠いの? えー、なんでそんな依頼受けたん」


溜息と共に今回の依頼を話すのは、先程田村と名乗った男。
トランプをしながら文句を言うのは、あの喫茶店の店員二人だ。ただし今は男女ではなく、男性二人だが。
面倒くさげな二人に田村は溜息を吐く。


「噂に縋るほど追い込まれているんですよ。頼ってくれたんなら助けたくなるのが人情ってもんでしょう」
「そりゃあ、田村の気持ちも分かるけどよ。本当に幽霊ってもんを信じてるなら、こーんな嘘くせぇ噂より本物の祈祷師とか祓い屋に頼むだろ普通」
「はい、食満先輩ペナルティ」
「嘘ぉ!? 強くねえお前!?」


マイペースにトランプゲームを続ける二人。
食満と呼ばれた整った顔立ちの男は、慌てて自分のカードに視線を戻す。
その姿に笑いながら、もう一人の男が田村を見た。


「俺は別に行ってもいいんだけどさ、先に依頼主のことはある程度調べといたほうがいいんじゃない? 罠とまではいかなくても、悪戯の可能性はあるし」
「うっし、これでどうだ久々知!」
「はい、食満先輩アウト」
「あれぇ!?」


カフェで客に見せた柔らかい笑みを食満に向けつつ、していることは容赦がない。トランプを見比べてヤケクソに頭をかきむしる食満を見て、田村は呆れたように嘆息した。


「あのねえ先輩方、侮ってもらっちゃ困りますよ。何年一緒にいると思ってんですか」


憮然とした声に、二人の視線が田村に注がれる。不機嫌そうに腕を組んで、二人を睨むように目を眇めた。


「依頼主のことも、内容のことも、調べてからアンタ達に言ってるに決まってんでしょう。そこを明確にしないとアンタ達が動かないことくらいわかってます」


ふん、と機嫌の悪いまま二人を睨む田村に、食満と久々知は顔を見合わせて苦笑を零した。思ったよりも、この後輩はちゃんと成長している。それが自分達のマイペースさによるものであっても嬉しいことに変わりはない。


「よし! じゃあ行くか!」
「田村、向こうの宿予約頼むな」
「もうやってます」
「「さっすが」」


携帯を振った田村に、先輩二人はトランプカードを投げ捨てた。








――
荒事まで行きたかったんだけど、もうこれずーーーっとすごい三年くらい眠らせてたというか続きが書けなかったものなので、もう切りのいいところで上げちゃおうということになりました。
巫女久々知書きたかった……荒事食満書きたかった……苦労人しつつもちゃんとリーダーな田村書きたかった……





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