食満くくピロートーク

*全くエロい要素はないけど事後







特有の気怠い空気が漂う。
布団の中からふわりと欠伸をしつつ、兵助は寝衣を整える留三郎を見た。兵助の方はまだ動ける状態ではない。腰が重い。いろんな意味で。

「寝るか?」
「んー…善法寺先輩は?」
「今日は帰って来ねえと思うけど」
「じゃあ寝ます」
身体から力を抜く兵助に留三郎は苦笑う。
「別に伊作は知ってるんだからいいだろ」
「やだ」
「やだってお前な」
「知り合いにヤったとか思われるの嫌でしょう」
「……まあ確かに」

好奇心丸出しのウキウキした表情で根掘り葉掘り聞いてくる伊作が浮かんで、慌てて掻き消す。確かにヤツは色恋沙汰には女子並みに好奇心旺盛だ。あれこれ推測されるのは面倒くさい。
留三郎のげんなりとした表情に、兵助はくすりと笑った。

「ていうかお前さ」
「なんです」
きょとんと瞬く兵助をジト目で見る。

「爪立てんなよ」

最中からピリピリと小さく痛んだ背中は、衣に当たって更に痛い。
怒るわけではないが、鍛錬だ風呂だと集団生活は人前で脱ぐ機会が多い。からかわれるか色ボケするなと注意されるか、いずれにしても面倒なことになる。かといって隠し通すのも無理がある。

「小平太とか仙蔵とか、絶対からかってくるぞ……。文次郎は鍛錬が足らんとか言ってくるだろうし」
「言わせときゃいいでしょ。ヤったのは事実ですし?」
ニヤリと口角を上げる兵助に呆れる。
「さっきそう思われるの嫌だっつったの、どこのどいつだよ……」
「誰でしょうねー」
「相変わらず可愛げのないこったな」
「男に可愛げなんて求められても困ります」
「勘右衛門とか八左ヱ門は可愛げあるけどな」
「後輩の愛嬌の話でしょソレ」
それとも、と肘をついて顎を乗せる。
「おれよりアイツらの方がお好みで?」
自然と上目遣いになったまま、兵助は蠱惑的に微笑んだ。
溜息を吐いて、留三郎はその黒髪を撫でる。

「さすがにアイツら抱く気は無いな……」
「抱けるって言ったらびっくりしますし先輩は一年生を性的に見てるって噂流しますからね」
「何その脅し。怖」

情報操作は彼の得意分野である。すると言ったら本当にする。こいつはそういうヤツだ。

「というか、傷残ってんなら薬塗ればいいじゃないですか」
「お忘れか久々知くん。薬は伊作が作ってんだぞ」
「あー…。……聞かれますよね」
「根掘り葉掘りな」
盛大な溜息を吐いた留三郎に、兵助は不敵な笑みを浮かべた。
「ま、男の勲章って答えときゃいいじゃないですか」
「お前な」
全く。
それはそれでいいと思ってしまうのだから、色恋とは本当に厄介なものだ。







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