I'd love to.









早いものでもう三年。さあ、今年も幸せを届けよう。



I'd love to.



大学生活も三年目。俺と勘右衛門は院に進学するつもりだが、八左ヱ門は春から実習に研修に大忙しだ。三郎と雷蔵なんて専門学校だったから、もう既に働いている。
みんな忙しくて五人揃って会うのも難しいのだが、それでも今は端末一つで会話ができる。インターネットに繋げばどこにいて何をしているのかわかる。
あの頃と比べるとだいぶ便利な世の中になったものだと思う。
勿論、利点だけでは無いのだろうけど。

それにしても、あいつらと再会してもう三年か。
三年で色々周りの環境も変化して、辛い事や苦しい事も多々あった。そしてその分、嬉しい事や楽しい事も沢山あった。
長かったようで、思い返せばあっという間の三年間。
……て、なんだか高校卒業するみたいだな。

自分で自分に突っ込みつつ、バイトからの帰路につく。
去年一年は組と再会した小料理屋で、店長に気に入られた俺はあれからバイトとして雇われている。あいつらも一はの面々もたまに食べに来てくれるし、他のお客さんからの評判も良いし、なかなか充実している仕事だ。


「へーすけぇ」
「あれ、八左ヱ門」


日参しているアパートの隣の豆腐屋さんで今日の夕飯を選んでいると、いつの間にか気の抜けた声の恋人が目の前に立っていた。
淡白だとよく言われるが、ちゃんと俺と八左ヱ門は恋人だ。休日にはデートもするし、やることはやっている。
というか合鍵を渡しているから先に入ってれば良かったのに。


「どうした? 合鍵持ってるだろ?」
「おう。いや、今来て兵助のお土産買おうと寄ったらいた」
「ああ」
「ほんとお前豆腐好きなー」


さすが俺の恋人。よく分かってる。
思わず微笑むと、八左ヱ門もにかりと笑って「じゃあ奢ってやるよ。どれがいい?」と言ってくれた。
八左ヱ門大好きだ。


「でなぁ、最近もう疲れて疲れて」
「無理すんなよ。ご飯食べたら寝ても良いぞ」
「でもなぁ」
「おまえ、前もそうやってぶっ倒れて俺らに怒られただろ?」
「それいつの話だよ」


軽口を言い合いながら二人分の夕飯を作る。でも本当に八左ヱ門は疲れているようで、話している最中でも眠そうだった。
ご飯を食べ終えたら添い寝してやろう。

八左ヱ門は、無理をしている時や疲れている時ほど俺に会いに来る。勿論最低でも週一ペースで会っているのだが、連絡もなく会いに来るのはそういう時ばかりだ。
三郎曰く、「お前が八左ヱ門の帰る場所だから」だそうだ。疲れた時にふと会いたくなる、一緒にいるとリラックスできるような、俺はそんな立場らしい。

俺はそれが誇らしい。


「あれ……八左ヱ門?」


ふと気付くと、八左ヱ門はテーブルに突っ伏していた。眠ってしまったようだ。
俺は寝室からタオルケットを持ってきて八左ヱ門にかける。
夕飯までの間、昨日出たレポートでもしておこうか。




***


「ん……、兵助?」
「起きた?」


寝始めた頃は茜色に染まっていた空も、今や真っ暗。
レポートに集中していたので気づかなかったが、結構経っていたようだ。


「……寝てたか」
「ぐっすりね。ご飯食べる?」
「ああ……ん、食べてないのか?」
「うん、レポートしてたから」
「そうか……悪いな」


苦笑しながら俺の頭を撫でる八左ヱ門に微笑んで、夕飯の用意をする。
八左ヱ門に買って貰った木綿豆腐で作った麻婆豆腐。
そういえば、八左ヱ門と再会したのも豆腐がきっかけだったなぁ。去年一はと再会したのも豆腐がきっかけだったし。
やっぱり豆腐は俺のラッキーアイテムだ。アイラブ豆腐。


「ほんと、兵助の料理は美味いなぁ」
「ありがとう」


毎度美味しそうに食べてくれる八左ヱ門。八左ヱ門を見てるとなんだかこっちまで幸せになってくる。
じっと見つめていると、目が合った。


「……兵助」
「……なに、」

八左ヱ門は柔らかく微笑んで、俺の手を取った。


「結婚しよう」




I'd love to.
(「喜んで」)














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