Its reason.









大好きなあいつらと再会して一年。
愛している恋人と再会して、一年。
もう一度出会えたことに、感謝を。





Its reason.





再会した一年の記念に、唐突に何かお祝いをしたくなった。
とはいえ俺の得意なものと言えばやっぱり豆腐料理、しか思いつかなくて。
定番の豆腐料理はもう殆ど作れる上にみんなにもしょっちゅう食べて貰っているし…どうせなら特別な料理を振る舞いたい、と一ヶ月前から考え続けた結果。

大学の近くに「ふくとみ」という小料理屋があることを知った。

南蛮の情報に精通していたしんべヱには、よく豆腐を使った南蛮料理を教えて貰っていた(「これ作ってくださーい!」と三人にせびられることも多かったけれど)。
創作料理もよく作っていたが南蛮の料理は斬新で、俺も三人が新しいレシピを仕入れてくるのを楽しみにしていたものだ。
今でこそ定番の麻婆豆腐や豆腐ハンバーグは、実はしんべヱから教わったものだったりする。

その店に行けばしんべヱに会える確証はないけど、なんとなく、またあの三人に会える気がした。
こういう時の勘は外れない。

「久々知先輩!?」

結果だけ言えば、 良い意味で俺の勘は外れた。
会えたのはあの三人組だけではなかったのだ。

「伊助! お前達も、久しぶりだなあ!」

俺の名前を呼んで抱きついてきたのは委員会の後輩だった伊助、後ろにいるのは八左ヱ門の後輩だった三治郎と虎若と、そして庄左ヱ門だった。
偶然なのか、運命なのか、俺達の委員会の後輩ばかり揃っている。

「久々知先輩、お元気そうでなによりです」
「相変わらず冷静だな、庄左ヱ門。……お前達も元気そうで良かったよ」
「はい! 僕達も最近やっと全員揃ったんですよ!」
「そうなのか、他の子達にも会いたいな」
「今度会いましょう!」

わらわらと俺の周りに集まる元一年は組の七人。
聞けば、元一年生は揃ったものの他の先輩に会ったことはなかったらしく。
俺が最初に会った先輩なのだそうだ。

「……あの、先輩の、学年は」

恐る恐る尋ねてくる乱太郎の言葉に、他の子達も期待と不安が混ざったような瞳で見つめてくる。
そんな一人一人の頭を撫でてから、俺は後輩にだけ見せる(らしい)微笑みを向けた。

「俺の学年は五人、全員揃ってるよ。今度連れてくるな」

言い終わる前にわあ、と歓声が上がる。
やっぱり交流が深かった先輩と会えるのは嬉しいらしようで、いつも冷静と言われている庄左ヱ門までもが手を叩きあっていて俺まで嬉しくなる。

そこで、良いことを思いついた。

「しんべヱ、ちょっと良いか?」
「はい?」




一ヶ月後、俺は八左ヱ門達を「ふくとみ」に呼び出した。
店の名前を聞いた時の反応は様々だったけど、みんな期待しているのが丸分かりで微笑ましくなった。
一年記念日は喜んで貰えそうで、四人にする初めてのサプライズに俺も気合が入る。

「先輩、料理の方はどうですか?」
「案外難しいけど、良い感じだよ。後で試食してくれ」
「はーい!」

記念日に作る豆腐料理の準備も上々。
しんべヱにこっそり聞いてみると、あの時代よりも豊富でお洒落な料理があれやこれやと出てきて、時代が変わったんだなあとしみじみと思わされた。

小料理屋で俺が作るのもどうかと思ったのだが、店主であるしんべヱのパパさんが快く厨房を貸してくれると仰ったので甘えることにした。
それまでも豆腐料理の練習に厨房の一部を使っていいと言ってくれ、乱きりしんはここでバイトしているらしく味の感想もすぐにもらえるし、本当にパパさん様々って感じ。

「先輩、美味しいですこれっ!」
「これ、もうここで出せますよぉ!」
「やっぱ先輩の豆腐は金になりますねぇ〜」

あひゃあひゃと笑うきり丸に苦笑しつつも、三者三様の褒め言葉に照れる。パパさんにも太鼓判を貰ったので、あとは時を待つだけ。

さあ、準備は整った。

「いいか、俺が合図したら一斉にだぞ」
「はぁい!」

七人の元気な返事に笑いながら頷く。
子供達の顔はサプライズをするという高揚感と先輩に会えるという期待が混じった表情に満ちていて、俺の顔も綻ぶ。

再会して一年目の記念日は、また新しい記念を刻みつける。





Its reason.
(「せーのっ!」)(「先輩!!!」)(「!?」)








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