先日、レギュラスくんに「そろそろ名前で呼んでくれたっていいんじゃないかな?」と言ってみた。結果、「なんで?」と少々冷めた態度で返された。数年の付き合いがあっても、彼のこの態度はなかなか変わらない。
わたしがレギュラスくんに呼ばれるとき、彼はねえ、あの、ちょっと、とわたしの名前を呼びたがらない。どうしてだろうとずっと前から不思議に思っていた。呼ばれる、というかこれでは呼び止められる、だもの。

「だって、変じゃない?わたしはレギュラスくんを名前で呼んでるのに、レギュラスくんは、わたしを名前で呼ばない。うん、変よ、すごく変」
「そんなに変?」

うん、と頷くとレギュラスくんはそうかと考え込んでしまった。何でそこで考え込むんだろう。レギュラスくんってたまにおかしな行動をするから、面白くてついついてまわってしまう。

「わたしの名前、呼ぶのイヤ?」
「いや、そんなことは……」

じゃあどうして呼ぼうとしないんだろうか。わたしの名前が嫌いなのかとか嫌な思考がとまらない。

「自分でもよく分からなくて……ただ何か理由はあった気はするんだけど」
「じゃあ今此処でわたしの名前、呼んでみてよ」
「……」

何でそこで黙るのか。やっぱりわたしの名前が嫌いなのか、呼ぶのがいやなのかの二択しかないような気がしてならない。

「あ、分かった」
「え?」
「皆が名前で呼ぶからだ」

何だそれ。思わず笑ってしまうと「これにもちゃんと理由が……!」と少し怒り気味にレギュラスくんは言った。

「名前呼んだら、その他大勢と変わりないじゃないですか」
「意味がわからないよ」

また笑みが零れてしまう。それじゃあまるで、わたしの中の何か「とくべつ」になりたいみたいだよ。そう言うとレギュラスくんは真っ赤な顔をして「悪い、ですか?」と言ってきた。思考が一時停止した。

「もう隠すのもバカらしいんで言いますけど、僕はずっとあなたのことが好きで、あなたの特別になりたかったんです」

赤い林檎みたいな顔したレギュラスくんとそれに負けないくらい赤い顔をしてるだろうわたし。まわりから見ればきっと変な光景なんだろうなぁ。

「で、どうなんですか?」

何が、と返すと「返事です」と即答された。何か、今のレギュラスくんすごく勢いに乗ってるよ。

「そうだな、名前で呼んでくれたらしてあげるよ」

わたしがそう言うとレギュラスくんははぁとため息をついて、「ナマエ」と少し照れ臭そうにわたしの耳元で囁いた。
そうだね、答えはもう、決まっているよ。



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