僕、が他寮に属している兄、から漸く開放されて談話室に戻ってきた時、
彼女、は新学期も始まって暫く経ち、秋も深まってきて消灯時間を過ぎた夜、
とも為ればもう決して暖かくは無い筈、の誰も居ない談話室のソファ、
何も掛けず眠って居た。手には読みかけの本。先程消灯時間前、僕が
彼女、に如何解釈したら良いのか解らない処が在って、と雑談程度に話した処


「もし私、で良ければ、」

其れちょっと読んでみても良いかな、レギュラス


少々心配そうな顔、と共に伝われて
僕もそう思っていたので是非お願いします、云いながら本を渡し
有難う、安心したように云いながら嬉しそうに『笑』う彼女、を見た直後、
何処から入ったのか談話室に乱入した兄、に拉致され数時間。
きっと戻らない自分、を此れを読みながら待っていてくれた、のが解って
外の冷たい夜気、と兄、にあてられてすっかり冷え切ってしまった心、に
に暖かさが広がっていく、のが解る。
其れにしても僕には酷く無防備、で愛らしく映るけれど
兄がこの場にでも居れば


「俺常々思ってたんだけどな、『なんで』ナマエ、は、」

あんな格好、で眠れるのか早急に解明しろ、レギュラス


という突込みが間違い無く入りそう、
恐らく世間ではこう云われると推測される『変』な体勢、
で寝ていては風邪を引く前にきっと明日筋肉痛で大変な事、に為る。
そんな風に思いながらも起こさない様そっと近づいて


「こんな処、で寝ていたら、」

風邪、を引きますよ、ミョウジ先輩


伝ってはみる、けれど
自分では普通に伝って居るつもりの言の葉、
の口調や内容、に未だ踏切りが付かない自分、が居るのが解って少し気分が沈む。
幼い頃から兄、そして僕、の幼馴染、
そして此処、へ入学してからは同じ寮に入り、そして
昔からずっと持ち続けて居た想い、を
兄と付き合って居たけれど兄の好色具合、に
ほとほと疲れ果て、別れを選んだ貴女、に告げ
晴れて恋人として一緒に居るように為ってもう随分経つ。
兄への気遣いからはじめた姓(ファミリーネーム)呼び、
もすっかり板についてしまい、こういう関係に為った今、も
呼ぶ事が出来ずに今日に至る。そんな兄との諸事情、を
察して呼ばれる侭に任せてくれている貴女、の優しさに甘えてばかり、
ではいけない、と思う。思いながら柔らかい手触り、の長い髪、に触れた刹那
気付いたのかあれ、レギュラスお帰り、戻ってきてたの、の言葉と共に
起きぬけ動こうとしたソファ、から推測通りバランスを崩して僕の腕、の中に
収まった彼女、を苦い笑い浮かべつつ、も横抱きし。
そして…今、なら、言える気がした。


「わ、御免ねレギュラス、大丈夫だから下ろして、」
「駄目です。何回も注意したのにまたあんな格好、で寝ていた罰、として
今日は朝迄一緒に居て貰います。良いですね、ナマエ」
「レギュラス…今…もしかして、」
「何ですか、ナマエ。此れからは何度でも呼びますよ、愛しい想い人(あなた)、の名、を」
「…其れ反則。倒れそう」
「何度でも抱きとめますよナマエ、貴女の心と共、に」



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