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「しゅーぞー。朝ごはんー。」


気の抜けたこの声が聞こえたと同時にがばっ、と虹村の布団がはがれる。急に外の冷たい外気に触れて虹村はぶるり、と震えた。時計を見ると6時43分。冬休みは9時すぎに起きてるのが常だった虹村は眠たげに目をこすった。


「お前、ほかに起こしかたねーのかよ。」


さっむ…。と虹村が名前を睨むが名前は、はぁ…。とため息を吐くとあごでクイッと壁にかかっているカレンダーをさした。今日は1月7日のようだ。しかも、そこには名前らしく、ピンクのマーカーで印が付けてある。


「…ん?今日名前誕生日だったか?」


試しに聞いてみると名前は一瞬ぎょっ、としてから怖いくらいの満面の笑みに変わった。


「しゅ・う・ぞ・う・く・ん?今日は、何の日か、わかるかな?」


名前のもとから高い声が猫なで声に切り替わる。ご丁寧に名前は一字ずつきってあり、文は文節で切られている。しかも頭をがし、とつかまれ考えてみろ。とさっきとは違う冷え切った声でいうものだからさすがの虹村も肩を揺らしてしまう。虹村は名前がこの話し方をするときは機嫌が悪いと知っているので記憶の中から1月7日を必死に思い出そうとした。


「あ、思い出した。今日始業式だ。」

「だから起こしてあげたんじゃない。修造、早くしてね。」


朝ごはん出来てるからさ。そういい残して名前は席に着いた。機嫌はもう治ったようだ。




いただきまーす。名前と虹村は手を合わせて食べ始めた。なんだかんだ言って自分を待ってくれる名前のそういうところが虹村は好きだった。名前が朝はパン派なので名前が朝食を作るときは必ずといっていいほどパンだ。今日はトースト、スクランブルエッグ、ベーコン、サラダ、目玉焼き、ヨーグルトだ。虹村の前にはコーヒーがある。名前は紅茶のようだ。虹村はコーヒーは苦くて飲めないの。と名前が言っていたのを思い出した。虹村もさすがにブラックでは飲めないので冷蔵庫に牛乳を取りに行った。


「修造、私のにも。」


ずい、と差し出されたティーカップに少しだけ牛乳をそそぐ。今日はミルクティーらしい。自分の分にも少し入れて、机の上に牛乳パックを置いた。時刻は7時25分。虹村が目玉焼きを食べようとした時、醤油がない事に気づいた。目玉焼きが醤油派の虹村にとって醤油のかかっていない目玉焼きはもはや目玉焼きではないのだ。醤油を取りに行こうと虹村が席をたった時、机の上にコトリ、と名前が醤油を置いた。


「どうせこれでしょ?」

「…おう。よくわかったな。」

「修造のことならなんでも知ってるよ?」


言わなくれもね。と笑った名前に何故か虹村は一瞬目が離せなくなった。
机の上の牛乳パックには水滴が伝っていた。



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