フェチ | ナノ

昨日私がお弁当を食べていると、さつきちゃんがすごい剣幕で話し掛けてきた。
どうしたんだろう。てかさつきちゃん長い髪をポニーテールにしていた。とても可愛い。さっすがさつきちゃん。
あぁいえ、変な意味じゃないんです。ただの感想です。


「ねぇねぇ名前ちゃん!」
「何?」
「あのさ!・・・ここだけの話、むっくんって“髪の毛フェチ”なんだって!」
「ふーん」
「・・・え、それだけ?」
「だって興味ないもん」
「はぁ」


哀れな目で見られたのはなぜだろうか。いささか理由が分からない。


▼△▼


「ねーねー名前ちん」
「なぁに紫原君」
「・・・むっくんでいいよー」
「え、あー、うん。じゃあむっくん、取り敢えず聞きたいんだけど何やってるの?」


紫原君もとい、むっくんは私に体重を乗せている。あ、今抱きついた。私が「重いよむっくん」と言おうとするとぱらぱらと粉のようなものが落ちてくる。何だこれ、と思うとさくさくと音を立てている紫原君の口。正確には“まいう棒”だ。うわああああ。髪の毛がお菓子臭い。というか少し脂っぽい。女の子にとって髪の毛は命!というほど私は女子力は高くないからあまり気にしていないけれど。


「ねえむっくん…お菓子のかすが付いちゃったんだけど」
「えー」
「えー、じゃなくって!とりあえずお菓子はやめよう、うん」
「やだー」
「・・・」


むっくんとは会話が進まない。
私は諦め、お菓子のかすを払いのける。払いのけても払いのけても変わらないのはある意味事実。少し複雑な気持ちになりながらも私は窓の外を見る。


「ねーねー名前ちん」
「何かなむっくん」
「名前ちんの髪の毛好きー」
「・・・はい?」


さらさらと髪の毛を触っているむっくん。何故かはわからないけれどとてもくすぐったいから私は体を捩る。だけどむっくんは止めようとしない。


「ちょっとむっくん!」
「んー」
「聞いてる…?」
「なにー」
「だーかーらー!お菓子のついた手で髪の毛触らないでほしいなぁ、なんて」
「・・・こっちはついてないー」


そう言ってひらひらと左手を見せる。あ、確かにお菓子はついてない、と思う。
その代わり右手はお菓子のかすがついている。じっと見ているとむっくんは、右手の親指と人差し指をぺろっと舐めた。その仕草がとても様になる。ぽーっと見ているとむっくんは少し笑った。目が合ってしまった私はぱっと逸らす。あ、いや、何で逸らしちゃったんだろう。ばかだ、私。


「今さー。名前ちん見惚れてたでしょー、俺に」


やられた。
そう言って私の髪の毛に口付けを落とした。


title by LostGarden

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -