禁断 | ナノ

「名前、好きだ。」




顔を真っ赤にしながら私に愛の言葉を言ってくれているのは健にい。私の、血の繋がった正真正銘の、兄。
私が、ずっと恋焦がれていた、私の好きな人。けれどその恋が実ることはない。どんなに頑張っても無理なのだ。どう抗っても、兄と妹。その思いが報われることはない。

私も辛い。健にいのその気持ちにこたえたい。私も健にいが好きだから。

と、未だに顔が赤い健にいが私の目の前に。え。と声を上げる間もなく顔を近づけてくる健にい。
私の唇と健にいの唇が重なる。




………前に目が覚めた。




「ゆ、め…。」



心臓がバクバクと音を立て、健にいが選んでくれたパジャマは汗で体に纏わりついてきて気持ち悪い。心なしか息もはあはあと荒い。

夢、そう。夢なんだ。私はこの悪夢のことはもう終わりというように頭を軽く振り、やっぱり健にいが選んでくれた淡いエメラルドグリーンの目覚まし時計に目をやる。
6時12分。
そろそろ起きて、お弁当を作らないと。




「名前?」


「っ!?」




私の部屋の前突然現れた健にいに私は思わずさっきの夢のことを思い出してしまい体が無意識に強張る。意外な事に肉体の方も罪の意識を持っているらしい。
すると健にいが様子がおかしい私に大丈夫か?と心配してくれている。いくらなんでも健にいに告白される夢を見たの。なんていえない。言ってしまえばまず私は健にいの軽蔑の対象になってしまうだろう。それは、単純に嫌われるより辛い。もし、なってしまったら死にたいとさえ思うだろう。
無難にうん。と私は返す。でも



「…さっき、うなされてたろ。」


「な、んで。」




健にいには全部、分かっているらしい。その時、何故かはわからないけど私はだれかに心臓を握りつぶされるような感覚がした。それがなんなのか分からず、それの正体がとても恐ろしいものに感じ、その感覚を上から塗りつぶすように健にいに思いっきり抱き着く。
健にいはしっかり抱きしめかえしてくれる。私の乱れた心拍数を正すように規則正しくポンポン、と背中をたたいてくれる。




「あのね、健にい。」


「おう。」


「怖い、夢見たの。」


「…そうか。」




どんな、なんて聞かずただただ私の背中の手だけを動かす健にい。無性に泣きたくなった。




「好き。大好き。」




ここで言っても健にいはこの言葉を愛の言葉として受け取ってくれないだろう。




「俺もすきだから。」




小さい子をあやすように小さな声で言うが、健にいの言うすきは兄弟愛のすきだ。
LOVEの好きになるには、私は不幸過ぎた。

これが、夢ならよかったのに。夢が現実で現実が夢なら…



夢と現を混ぜる
(混ぜることができたなら、楽だったのに。)





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