「よく頑張った」
駅員さんは、そう言って拍手してくれた。
しばらくしたら、駅員さんだけじゃなくて、駅にいるひとみんながぼくに拍手を送ってくれた。
「“音楽を愛する者へ”って曲だ」
誰かがいった。ぼくはその題名を口の中で何回も呟いた。
「その顔からすると、知らなかったみたいだね。だいぶ前かな。君みたいに駅に来た子がいた。その子も何も出来なくて、泣き出したよ。仕方ないから、歌なら平気かい?って聞いたんだ。それでいまの歌を駅のみんなで合唱したんだ。──前の駅長から聞いた話だ」
ぼくはなぜか、それはおじさんのお父さんのことだと思った。
ぼくと一緒だったんだ。ここから始まったんだ。そう思ったら少しうれしくなった。
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