「お客さん、起きてくださいよ」
ぼくは眼を開けた。眠っていたみたいだ。心配そうに人がのぞき込んでいる。
「音楽駅、終点ですよ」
「ええ!」
ぼくは聞いたことのない駅の名前に驚いてしまった。仕方なく、電車から出てみる。駅は大音量のスピーカーがおいてあるみたいに、音楽で溢れていた。曲名はわからないけれど、心踊るような感じの曲だった。
「あの、次の電車はいつ来ますか?」
ぼくは駅員の人に聞いてみた。駅員さんは片手にカスタネットを持って、話す度にカタカタと音を鳴らした。
「五十分後ですよ、電車は。お忘れなく。今晩の演奏は“ヴァイオリストの少年”ですからね♪」
駅員さんはまるでミュージカルに出てるみたいに、節をつけて言った。ぼくはありがとうと言って、階段を降りて行った。
6/36