「きゃあああー……」


 バリエはタカのおじさんから落ちてしまいました。
けれど、運良く木の葉っぱに引っ掛かりました。そのあと何回も風にとばされて木の高い所から低い所へちょっとずつ落とされて……最後には川の中に落ちてしまいました。

──ポチャン!


 泳ぎながら、バリエはコオロギのブラックのことばかり考えました。タカのおじさんの背中に誰も乗っていないのがわかったら、どんな顔をするだろう。飛ぶ前、心配そうな顔をしたブラックが何回も頭の中に出てきました。

 バリエはブラックのもとへ帰りたい一心で一晩泳ぎ続けたのでした。

 帰ったら、きっとみんなはぼくを英雄扱いするかもしれない、バリエは思いました。
けれど、それよりも大切なのは、ブラックと泳いだり、歌をうたったり、月を見に丘をのぼったり。それだけが大切なんだ。そう思いました。

(空をとんだカエル/了)
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