その日、男は少し早く目覚めた。

 だが、何かが可笑しい。

 目覚めた時、男は何か胸騒ぎを覚えた。それが何を意味するものかは分からなかったが。

 男には目に映るものすべてが新鮮に思えた。
 もう一度、自分が目覚めた箱の中を覗いてみる。何の変哲もない只の箱だ。しかし、男は生まれて初めて見るものの様にまじまじと見つめた。箱の底面には何かの文字だろうか、何かが刻まれていた。

『冷凍睡眠装置』

 こう書かれていた。しかし、男には読むことが出来ない文字だった為、全く意味が無かった。そう、彼は冷凍睡眠により無意識の中時限を移動してきた。そして、更に男の記憶の中には自分が冷凍睡眠していた、という事実は記憶されていなかった。それは、彼の理解も承諾も得られぬまま行われてしまったのだ。

 男の意識の無い中で、科学も文化も急速に進んだ。その結果、男の以前生きていた時代とは文字も機械も習慣も全て異なっていた。

 男は家の中の珍しい物を一通り見ると腰を下した。

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