五つ年上の友達のシンちゃんは優しいけど、嘘つきだ。
小さいころは、「サンタの正体は俺だ!」とか、「お風呂の栓を抜いたら人魚の国にいけるんだよ」と言われたあたしはしばらく本当に信じていた。
彼曰わく、「俺は善人だから優しい嘘をつくのさ」
人間はみんな嘘つきだ。自分を偽ったり、人間関係を円滑にするために嘘もつく。もし、嘘をついたことがないと言う人がいたとしたら、よほど無神経かもしれない。かならずしも、事実を言うことばかりが正しいとも限らないからだ。
その中で、上手く優しい嘘をつける人がきっと、良い人になるのかもしれない。
あたしはいまだにシンちゃんの嘘にバカみたいに騙される。
エイプリルフールは特に、シンちゃんの独壇場だ。毎年、何を言われるか冷や冷やしている。
「俺はそんな素直な琉衣ちゃんが好きだよ」