シンちゃんは嘘つきで優しい。
でも、あたしだけじゃない。
優しい人は当然、他の人にも優しい。
博愛主義者。
みんなを愛してるようで、本当は誰も愛してない薄愛主義者。もしかしたら、優しいってすごく残酷なことかも知れない。
シンちゃんの眼には何が映ってるの?
「それも嘘?」
「んー…、どう思う?」
シンちゃんはにやにやしながら、楽しそうにあたしを見つめる。
でも、シンちゃんの言葉があんまりうれしかったから、
「わかんない」
そう言って、あたしは笑いながら、言葉を濁した。
言葉が嘘でもシンちゃんと一緒にいられる今が本物なら、構わないと思った。
【完】