それでも、本能という最も拒むことが出来ない衝動から逃れることはできません。それこそが人間の証なのですから。生まれる前から植えつけられた、与えられた種を、生きてゆくにつれ開花させてゆくのです。そこに一片の美しさなどありません。有るのは、本能と欲望。それを体裁の良い言葉で表し、時に溢れだす欲望を愛と呼ぶのは、何故でしょう。もし、そんな醜い感情さえ抉り採って、凡てが無機質な体躯に生まれ変われたなら。

 けれど、そんな頑是ない苦しみに喘ぎ、自らの醜さを自己嫌悪し出口の無い迷宮で彷徨い歩く私すら見付け出し愛してくれたあなたのことを考えると、けして二度と戻れなくとも、あなたと共に逃れられぬ、動物的な感情に身を委ねても好いとさえ願ってしまうのは、愛しているからでしょうか。

 それとも、私も簡単に衝動に駆られ、欲望に身を任せ、本能に支配されてしまう様な、何処にでも居る詰らぬ女だったのでしょうか。


 たとえ、私の感情の正体がどちらだとしても、もし、この愛が嘘偽りだとしても、この愛の行く先が悲劇だとしても。私にはもう、引き返す道など残されていないのです。


 本当に、愛してしまったのです。

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