エデンへ向かう宇宙船の中で人々は自分たちの故郷、地球の最期を見届けようと窓から闇の中の青い星を見つめていた。その中で初老の婦人が呟く。
「ああ、あの人はまだ無事なのかしら」
「博士ですか?」
隣の男が答えた。
「ええ、人類が支配した地球の余命は僅か。そして、人類は核爆弾による地球の安楽死を選んだ。その最高規模の破壊力を齎す技術を創りだして……あの人は眠りにつくまで罪の意識に苛まれて続けていたわ」
「そして、彼は残り愛する星とともに眠りにつくことを選んだ」
「何故、無理にでも連れてこられなかったのかしら……!」
そして五時間後、地球は破滅する。
世界に四十日間雨が降りノアの方舟に乗った者以外を滅したように、核爆弾による放射能も長い間地球に降り続くのだろう。
たった一人の男を残して――。
【完】