その言葉に女は軽く微笑んだ。
 この街の靴屋の間で、女の足のサイズはシンデレラサイズと呼ばれている。
 それは女の足が異常に小さく、靴が既製品では合わず常にオーダーメイドで作られていることによる。童話のシンデレラも彼女のガラスの靴は誰ひとり小さくて入らなかったが、彼女の靴もまた彼女以外には小さ過ぎて入らないに違いない。

 いつしか、この足の大きさだったり身分がわからなかったりといったことから、何処の誰かわからない美しい女は、社交界で『シンデレラ』と呼ばれるようになっていた。

 人々は彼女を噂しあったが、その中に真実はなにひとつなかった。
 なかには、探りをいれようと、女に話しかける大胆な紳士もいたが、彼女の美しさの前では普段の話術も形無しだった。女の、潤んだ瞳に見詰められ、うっとりするような甘い声で話し掛けられると、どんな男でも失語症に陥ってしまうのだ。

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