椋鳥


毎週毎週よくもまぁ、
なかなか俺も飽きないものだ。


組み敷いた身体に張り付く髪を一房ずつ丁寧に外してやれば、
力を込められた彼の白い腹筋がひくりと跳ねた。
うなじに鋭い痛みを感じた気がして、ふと顔をあげれば、
真っ赤な顔で自分を睨みつけている彼の瞳に射抜かれた。

「…どうした」
「…やるなら…さっさとやれば良い」

さも不機嫌そうな表情で口を開けば、そこから出て来る声も案の定不機嫌そうで。
実際凄く不機嫌なのだろう。

ただ不思議なのは、
彼は俺に対して今までに一度も抵抗を見せていないことだ。



「化け物の監視係」である俺達は、
毎日交代で「監視」と称して彼に伽を命ずる。
人は交代するとはいえ、彼にとって他人に伽を命じられることは変わりない。
つまり彼は毎日誰かに身体を開いていた。

こんな状況が三ヶ月とも続けば、奴は身体も心も壊れ、ただの色欲に狂った奴隷と化すだろう。
彼に伽を命じると宣言した男を始め、俺達全員そう践んでいた。

しかしだ。
奴は毎日変わらずきつい眼差しを向けてくるわ、後ろの穴も一向に緩まらないわで、
化け物の精神及び肉体の強靭さに俺達は悔しさ半分呆れ半分、そしてある種の尊敬を抱いていた。

自尊心を固めたものに命を吹き込んだらあぁなるのではないかと思うほどに強気を保つ彼は、
何度酷く抱かれても、何日連続で抱かれても、
いくら最中に酷く乱れ、猥らに腰を振りいかがわしいことを口にしようと、
こちらが一度部屋を出て戻って見れば、変わらず警戒心剥き出しで睨みつけてくるのだ。
俺は経験がないが、他の者は近寄る度蹴られ殴られ噛み付かれで大変らしい。
むしろ何故俺だけ素直に身体を開くのか、俺を含め誰もわからないのだ。
きっと彼なりの理由はあるのだろうが。



「随分大雑把な誘い文句だな」
「誘った覚えなどない、ヤりたいならさっさとぶち込めばいい」

はん、と顔をそらす彼は、顔に似合わず大層下品な口を利くようだ。
つんとした表情とあんまりな言葉にだんだん俺も苛々してきていた。
いや、きっと前から苛々していたのだろう。
俺達になかなか屈そうとしない彼に。


「…お前が望むなら、そうしてやろうか」


少しでも、その高嶺気取りの顔を崩してやりたかった。


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