▼ おはようを君に
「ん、、あさ、、」
カーテンから差し込む日差しに目を開ける。
どれくらい眠ったのだろうか、今何時だろうか。
今日が確か休日だということは覚えている、それ以外はぼんやりと霞む頭。
「、、?あれ。」
いやに落ち着く香りがすることに気付き顔を上げると、隣にはすぅすぅと寝息を立てる悠一くんがいた。
なぜ。昨日のことが全く思い出せない。
最近は仕事がとても忙しく、残業の続く日々だった。
確か昨日は家に帰ったのが日を跨ぐ少し前くらいで、晩ごはんも食べずにシャワーを浴びて蓄積された疲労と共にベッドに倒れ込んだ。
と、いう記憶はある。じゃあ私が眠った後に悠一くんは来てくれたんだろうか。
「ん、、なまえ、、?」
「あ、悠一くんおはよう。来てたんだね。」
悠一くんを見ながらぼんやりと考えているとその瞳がゆっくりと開かれた。
寝起きにも関わらずなんて整った顔なのだろう。
「ん、、おはよ。来てたんだねじゃないでしょ。」
「え、?」
少し不機嫌そうに返された言葉に、首を傾げる。
まだ眠かったとか?
不機嫌そうな表情のまま、ベッドから体を持ち上げた悠一くんは私を押し倒すように組み敷いた。
視界一面に見える悠一くんは不機嫌そうでもやっぱりかっこいい。
「昨日の記憶ないの?」
「え、昨日は仕事から帰って寝た記憶しか、、、」
「はあ〜〜。俺の心配返して。」
そう言って今度は私の首筋に顔を埋めた悠一くん。
髪の毛が当たってくすぐったい。
「ちょ、くすぐったい。」
「お仕置き。」
「っ、ひゃっ、、!」
急に首筋を甘噛みされたようで突然の刺激に体が飛び跳ねる。
首元でクスッと笑った声が聞こえた。
「も、やめてよ。ていうか私何かしちゃった?」
「本当に覚えてないんだな。何度も電話したんだけど?昨日。」
「あ、、、」
悠一くんの言葉にふと思い出す。昨日ベッドに入る直前。昼休み以来に確認した携帯には着信が何件か。全て悠一くんからだった。
未だ首元に顔を埋めたままの悠一くん。
首筋を舐めたりキスを落としたり。随分と甘えん坊だ。
「あ。」
「思い出した?」
「通話ボタン押したところまでは、、」
やっと顔を上げた悠一くんはまだ少し不機嫌な表情をしていたが、次に額に落とされたキスはとても優しくて。
「やっと電話かかってきたと思ったら無言電話。
すやすや眠ってるの視えてたけど、心配するだろ。」
「ご、ごめ、、っん、、ぅ。」
最後まで言い切る前に唇に落とされたキスにくらりとする。
くっついて。離れて。何度かそうやって甘いキスをくれた悠一くん。
「怒られてんのにエロい顔しないの。」
「し、してません。」
「連絡、ちゃんとするって約束して。」
「はい。ごめんね?」
首に手を回し、今度はこちらから。
ちゅっと触れるだけの口付けをすると、「本当に反省してるの?」なんて言われてしまった。
「それじゃ、いただきます。」
なんて、下された前髪を無造作にかき上げた悠一くん。再び降りてきたキスは深く甘く。
休日のあたたかな朝に身を任せた。
2021.3.25
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