迅くん | ナノ


3.あたたかいごご


目の前で美味しそうにもぐもぐと口にチャーハンを頬張る陽ちゃんと迅くん。

5歳と19歳らしいが、食へと向かうその姿勢があまりにも似ていて面白い。


何より自分の作ったものを美味しそうに食べてくれるのはとても嬉しい。




「あれ、なまえさんまた俺に見惚れてる。」


「はいはい。口に入ったまま話さないよ。」



朝のように冗談を交える迅くんを同じようにあしらう。

こんなことを言いながらも、忙しいはずなのにこうやって昼食を一緒に摂ってくれることが嬉しい。


迅くんは、他の隊員たちとは違うということは何も聞かずともなんとなく分かった。そして、実際S級隊員というすごい立場らしい。すごい立場って、私も語彙力がない。


予知のサイドエフェクト?という、つまり未来が見えるとか。そのために様々な暗躍をしているとかで、、、まあ、とにかく忙しい立場だ。


そんな彼に助けてもらってから早一ヶ月。訳ありの私をここに置いてくれたのも、こうして
気にかけてくれるのも彼だ。感謝してもしきれない。






「はぁ。なまえさんを落とすのは骨が折れそうだ。」


「迅もまだまだということだな!」



続けられる迅くんの冗談に、キラーンとどや顔の陽ちゃん。




いつのまにか食べ終えていた迅くんは、手を合わせると自分の食器をシンクまで下げた。



「食器置いといてね。」


「ん、なまえさんごちそうさま。」


「いってらっしゃい。無理しないでね。」


「なまえさんもね。陽太郎、なまえさんを頼んだぞ。」


「おう、任せろ。」



いやいや何を。というツッコミは最早しない。わりといつもの謎のやりとりだからだ。


またぽんぽんと私の頭を撫で、出て行く迅くんの背中を見送る。
昼食時の滞在時間は大体30分にも満たない。本当に忙しくしているんだろうなと感じる。





さて、午後の家事は掃除の続きに夕食の買い出し。


今日の晩ご飯は何にしよう。





2021.3.2



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