1.万能じゃない
カーテンから差し込む光。
慣れた布団の心地よい香りとともに目を覚ます。
目の前には見慣れた玉狛支部の自室。
今日も一日、実力派エリートとして頑張りますか。
「ん!?」
なんて考えていたところ、突然見えた未来に一気に頭は覚醒。
慌ててベッドから飛び降りる。
適当に服を選び髪も整えぬままに自室を後にすると飛び降りるように階段を降りた。
「わっ、迅くん!?」
「なまえさん、、、。」
勢いよくリビングのドアを開けると、驚いたように目を開いたのはフライパン片手にエプロン姿のなまえさん。
驚いたように開かれたまん丸な目。かわいい。
「おい、どうした迅。そんなに慌てて。うるさいだろう。」
「げ、やっぱり。」
なまえさんの隣に、同じようにエプロンをつけたレイジさんを確認。途端に肩を落とす。
サイドエフェクトにより、目覚めと共に目にした未来はこの光景。なまえさんとレイジさんが2人きりで楽しそうに話してた。そう、2人きりで。
「なんでレイジさんがいるの。」
「たまにはな。いつもなまえだけに任せるのも悪いだろう。」
「これが私の仕事だし、いいって言ってるのに。」
困ったように眉毛を下げるなまえさん。
あ、これもかわいい。じゃなくて!
だからって2人きりで楽しそうにするのは無しでしょ。
私的なことにサイドエフェクトを使うのは良くないとは思いつつも、なまえさんのことは別。俺が見つけたんだから。
待って待って、レイジさんとのフラグなんて立ってないよね?大丈夫?
昨日まではこんな未来は見えてなかったし。もうちょっと働けよ、俺のサイドエフェクト。なんて。
「でもレイジさんの作るご飯美味しいから嬉しいよね、迅くん。」
「ん、まあ、そうだね。」
そう言ってにこりと笑うなまえさんに、ふうと一息ついて近づく。
「珍しい、迅くん寝癖。」
「っ、、」
「ふふっ」なんて、笑いながら俺の頭を撫でるなまえさん。人の気も知らないで。
その行為に、俺を写す瞳に、顔に熱が溜まらないように、なんとかして意識を逸らす。
くそ、読み逃しすぎ。
「はい、直ったよ。」
「どーも。」
満更でもないという顔で答えてみせる。
なまえさんの手元には綺麗に詰められたお弁当。
小南のものと宇佐美のものだろうと思われるものには、ハートの形をした海苔が飾られていた。
「どうしたの迅くん、お弁当いる日だった?」
「ううん。器用だなと思って。でも女子たちだけなんだね。」
ハートの形の海苔は、女子のご飯にしか乗っていないことに、少し気分をよくする。俺もまだまだだな。
「あ、これ?うん。作ってたんだけど、やめたの。年頃の男の子だし、嫌かなって。」
京介がそんなことを気にするとも思わないけど。
と言う言葉は飲み込んで。
なまえさんのこういう気遣いをするところも良い。なんて思う。気にしすぎるときがたまにあるとも思うけど。
「じゃあ残ったの、俺の朝ごはんに乗せておいてよ。」
「そう言うと思った。了解です。」
口元はニヤけないように。
慌ただしく迎えた一日の始まりも、ほんの少しのことで満たされる心も。
俺はやっぱりまだまだだな。
2021.3.2
ワールドドリガー迅くん夢はじました。
管理人迅くんより少し年上なのでこんな感じなのですが、主人公の年齢や容姿などはいつも通り未設定です。
彼の澄ました顔や余裕のある感じが好きなんだけど、愛されてみたいなと。
ゆっくり更新します。
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