11.みつかる
〜♪
「ん、、ねむ、、」
二度目の携帯のアラームを止め、ゆっくりと身体を起こす。
頭と身体を覚醒させるため、閉じたカーテンを開けると朝日が心地よい。
なんだか、今日は夢を見ていたような気がする。
たしか迅くんが出てきて、、寝ているところを起こされて、、、なんか言ってた気が、、、。
私も何か言ってた気もするが、思い出せない。
場所はこの部屋だったし、変にリアルだった気も。
最近、迅くんはかなり忙しいようだ。夜中に支部に戻っている形跡はあるものの、顔を合わせない日も多い。
なかなか話せないからって、迅くんと話す夢なんか見たのかな。
身支度をし、キッチンに降りると迅くん用に用意しておいた夕食はそのまま残っていた。夜中には帰ってきていないとしたら、これから帰ってくるかもしれない。お昼までに帰らなかったら、私が食べてしまおう。
エプロンをつけ、手を洗う。伸びをひとつし、お弁当と朝ごはんの準備に取り掛かる。
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「ではなまえ、行ってきます。」
「遊真くん気をつけてね、いってらっしゃい。」
順番に朝の支度を終えて支部を出ていく中、一番最後になった遊真くんを送り出す。かなりギリギリな時間だけど間に合うのだろうか。
のほほんとした顔でかけていった遊真くんの姿はすぐに遠くに見えなくなり、あの速さなら間に合うなと安心する。
今日は陽ちゃん達も本部に向かうようで、私一人残された玉狛支部はしんと静まりかえっている。
皆がいると賑やかでとても楽しいが、その分一人になると寂しい。一人でいるとあれこれ考えてしまう性格なのもよくない。
迅くん、帰ってこないかな。
なんて思いながらなんとなく携帯を取り出す。
朝はみんなを見送るまでは忙しなく、携帯を確認する暇はない。
まあ、私に連絡をする人はこの世界では限られているし、緊急な連絡もおそらくこない。
「ん?」
そんなことを思いながら取り出した携帯。液晶には"メッセージ 1通"の文字があり首を傾げる。
ずっとポケットに入れていたが、震えていただろうか。
私にメッセージをくれる人は限られているので、なんとなくそうかなとは思っていたが、
差し出し人には " 迅 悠一" と表示されている。
" 夜中起こしてごめんね。
知らない人が来ても相手しないように。"
夜中、起こして、、、?
「えっ、夢じゃなかった、、?!」
夢だと思っていた光景が夢じゃないという事実に驚く。それならば、私はなんて失礼なことだろう。迅くんが夜中に私を起こすくらいだから、きっと何かを視て教えようとしてくれたのだ。それを私は、、、、。
「覚えてない、、。」
自分の残念さにがっくりと肩を落とす。迅くんのことだから、私の様子に見かねてメッセージも入れておいてくれたのだろう。
なになに、知らない人が来ても、相手にしないように、、か。
「やあ、お嬢さん。」
「あ、どうも、、、、?」
朝日が心地よい玉狛支部の玄関先。
振り向くとそこには一人の男性。
黒の丈の長いコートに、肩には玉狛支部のみんなとは異なる、謎のエンブレム。
これは、もしかして、"知らない人"なのでは。
2021.3.18
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