不死川さん2 | ナノ

くすぐったい




朝。
そうっと寝室を抜け出すと台所に立ち朝食の準備をする。
寝室に残した彼は珍しく私が起きるのに気づくことなくすぅすぅと寝息を立てていた。


いつもなら布団を出る際に起こしてしまうか、なんなら私より早起きな彼。
昨夜は一緒に布団に入ったが、疲れているのだろうか。
それとも、私の布団から抜け出すスキルがあがったのだろうか。




ご飯を火にかけ、お味噌汁に入れる野菜を切る。

着々と料理を進めていると、ドタバタと騒がしい足音に、スパンと襖の開く音。



「てめぇ。」



振り返ると、ちょっと不機嫌な顔の実弥さん。

なぜ不機嫌?と首を傾げているとずんずんとこちらにやってきた実弥さんにぎゅぅと抱きしめられる。

その行為に疑問は深まるばかりだが、抱きしめられたぬくもりは心地よい。



『実弥さん、おはようございます。どうかされましたか?』


「勝手に布団から出てんじゃねェ。」


『えー。』



理不尽な言葉に不満を漏らすと今度はちゅっと唇に軽い口付けが落とされた。

突然のそれに驚くも嬉しく、頬が緩んでしまう。




甘酸っぱい。これが恋仲というやつだ。

恋人という意味で、晴れて実弥さんのものにしてもらった?私。
炊事や洗濯、掃除などの仕事は今まで通り。

実弥さんの任務のない日は共に同じ布団に入り包まれるように眠る。幸せな日々。




唇が離れると緩んだ顔を隠すようにその胸に抱きついた。
息を吸うと実弥さんの香りが胸に広がり気持ちが満たされる。好き。大好き。



「くすぐってェ。」

『ちょっとは我慢してください。』


胸に頬を擦り付けると髪の毛が当たってくすぐったかったのか、今度は実弥さんから漏れた不満の声。

少しでもくっついていたくてその声に言い返してみるとため息がひとつ落とされると共にくしゃりと大きな手で頭を撫でられた。


優しい。



「勝手に布団から出て行った癖に甘えてんじゃねぇぞォ。」


『えー。』



なんて言いながらも、優しく頭を撫でる手はやっぱり優しくて、大好きで。


甘く過ぎていく時間。お味噌汁のお鍋が音を立てて吹き出すまであと少し。



2020.2.5

お読みいただきありがとうございます!
第二部と言いつつひたすらに甘いお話を書くばかりになると思われます、、、

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