鬼滅短編 | ナノ

夕焼け色に




『義勇さん、帰ってるかなあ。』




夕飯の買いだしを終えて家に着いたのは空の色が夕焼け色に変わりかける頃。

なんとか日が落ちるまでに帰ってこれた、とほっと胸を撫で下ろした。





一昨日から任務に出かけた義勇さんから、今日中に帰るという知らせがあったので今日は少しだけでも豪華な食事にしようと買い出しに時間がかかってしまった。



義勇さんは帰っているだろうか。

そう思い、家の戸に手をかけた。





『ひっ、、!』




瞬間、ばんっ!という音と共に勢いよく戸が開かれ声にならない悲鳴をあげる。


目の前には、顔を真っ青にして同じく驚いたようにこちらを見つめる義勇さん。




『わっ、ぎ、義勇さん!びっくりした!どうかされました??』



普段ポーカーフェイスの彼からは想像できないほどに焦った表情に、何かあったのかと心配になり尋ねると、今度は勢いよく抱きしめられてしまった。




突然のことに頭が回らない。


久しぶりに包まれる義勇さんの香りにそっと抱きしめ返すと、さらにぎゅっと抱きしめる彼の腕に力が入ったように感じた。





『義勇さん、、?』


「どこへ行っていた。」


『え、あ、買い物です!』



抱きしめられたまま呟かれる息が髪にかかり少しくすぐったい。





『義勇さんこそ、どこへ行こうとしていたんですか?』



「お前を探しにだ。」



『えっ、、』



「帰ったらお前がいなかった。何かあったのかと思ったら身体が動いていた。」



義勇さんの言葉に、目を丸くする。
「心配した。」と最後に呟かれた声に、きゅーっと胸が締め付けられ、抱きしめ返す手に力を込める。

日が落ちなければ大丈夫だと思っていた。結果、大好きな大好きな義勇さんに心配をかけてしまった。



『ごめんなさい。日が暮れなければ大丈夫かと、思っていました、、。もっと用心します、、。』


「あぁ。いや、よかった。」


『え?』




もっと怒られると思っていたが、返された優しい言葉と義勇さんから伝わる安堵の様子に違和感を感じ、体を離して顔を見る。


何やら決まりが悪そうに目をそらす義勇さん。


『どうかされました?』


「お前に愛想をつかされてしまったのかと思った。」


『えっ、なんで!!』




そう言うと、腕を引かれた体は再び義勇さんの胸にすっぽりと収まってしまった。


今度は首筋に顔を埋められ、少しくすぐったい。


甘えるような義勇さんのその姿に、そっと頭を撫でる。




「家を空ける時間が多くてすまない。」


『なんだ、そんなことですか!!』



ぐぬぬ、と声を漏らす義勇さんの頭を私の首筋から離し、そっと頬に手を添えるとやっと目が合う。


整った顔と綺麗な瞳に見つめられるのはいつまで経っても慣れない。



『義勇さん。好きです。』



シンプルだけど、これが一番伝わりやすい。

その言葉を呟き、私からそっと唇を近づける。



「あぁ。俺もだ。」


ちゅ。と今度は義勇さんからのキス。


「なまえ、好きだ。」




唇が離れ、目を見て言われると、今度は恥ずかしくなった私から目を逸らす。



夕焼け空色に染まり、赤くなった顔がバレませんようにと祈ったり、、。




2020.1.15


[ top]