ぬくもりひとつ
もうすぐ夜が明けようとしているのか、はたまたまだまだだろうか。
任務帰りで疲れた体と頭はうまくはたらかず、まあどちらにせよ自分の目的は果たせまいと肩を落として義勇は自身の屋敷へと踏み入れた。
空に輝く星々や月明かりの届かない室内はしんと静まり返り、やはり目当ての姿は見当たらない。
「なまえ、、。」
ふと呟いた愛しい名前は自身でも驚くほどに弱々しく、しんとした廊下に小さく響いた。
眠っている彼女を起こさないよう、しかし彼女の姿を早くこの目に写したい。そう思いそーっと廊下を歩く足を早めると、開くはずのない戸の開く音に目を見開く。
『あ、義勇さん、おかえりなさい。』
目の前に現れたのは会いたくて会いたくてしょうがなかった彼女の姿。
ふぁあ。となんとも気の抜けるあくびを一つ。寝ぼけ眼で目をこする姿に堪えていたものが溢れ出すように愛おしがこみ上げる。
『、っ、わっ、おっと、、』
「なまえ、、」
任務で汚れた羽織も気にせずに抱きしめればバランスを崩し倒れそうになるなまえの腰を支える。
寝ぼけ眼の身体は力が入っておらずぽかぽかとあたたかい。
「あたたかいな。」
『お布団でしたからねぇ、、お外は寒そうですねぇ。冷たっ、、』
そう言ってなまえは俺の頬に手を当てて笑った。
「なまえの手が冷えるだろう。」
『いいんですよ、ほら、寒いからお布団入りましょ。』
あぁ、好きだ。
なんて思いながら自身の手をその手に重ねると、再び『冷たい』と笑ったなまえ。あぁ、こんなにもあたたかい。
2019.12.17