2.わたしと主人
「相変わらずお前は朝が弱ぇなァ。」
『うっ、、申し訳ございません。』
起きてから謝ってばかりだなと考えながら目の前で朝食を召し上がっている不死川さんに再度頭を下げる。
いいから冷める前に食えやと言われ手を合わせた。
訳あって不死川さまに拾われたのは3ヶ月ほど前。
行くあてのない私に、「俺が拾ったんだ、うちに来て飯炊きをしろォ。」と言って女中として雇ってださったのだ。
不死川さんは鬼殺隊という、鬼を狩る部隊の一員らしく、常に刀を持ち歩き、屋敷にいるときは鍛錬を欠かさない。
「なまえ、てめェ。」
『え!?は、はいっ?』
そんなことを考えながら朝食をとっていると、急に不機嫌な様子の不死川さんの声が聞こえて顔を上げた。
あ、これは、怒ってる、、。
どうしたのだろう。朝食がお口に合わなかったのか。いや、嫌いなものは使ってないはず。味付けも確かめた。
唯一、寝坊してしまい慌てて炊いたご飯が少し焦げてしまったのだが、焦げの部分は私の茶碗に隠し、不死川さんの茶碗には入れていない。
なんだなんだと頭を回していると、ため息が一つ聞こえた。
「なんだその飯はよォ。」
『あ。これは、』
不死川さんが見ているのは私の茶碗。
『少し焦がしてしまいまして、、しかし、不死川さんの茶碗には焦げた所が入らないようにいたしましたので、、』
そう言うと不死川さんはまた深くため息をおつきになった。
お米を焦がしてしまったことを怒っておられるのだろうか。
そう反省していると、不死川さんの箸が伸びてきて、私の茶碗にある焦げてしまったご飯をひょいと取っては口に入れた。
『し、不死川さん!?』
「隠してんじゃねェぞ。だから慌てんなつったよなァァ?」
『も、申し訳ございませんっ』
まだ朝なのに本日何度目だという私の謝罪には返さず、不死川さんは朝食を続けた。
私はというと不死川さんの突然の行動にパニックになるも、苦い焦げを食べずに済んだことを少しほっとした。
「苦ェもんは苦手な癖に、無理すんじゃねェ。」
『ありがとうございます、、っ』
そうか。やはり、わたしの主人はこんなにもお優しい。
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