不死川さん | ナノ

28.それは春


心地よい温もりの中すっと目を覚ます。


あまりにも心地の良い目覚めにぼんやりと覚醒しきらない頭。そして、ふわりと感じる抱擁。

あぁ。包まれているからあたたかいのか。なんてやっぱり覚めきらない頭でぼんやりと考えながら顔を上げると目に入った整った寝顔に一気にさえる頭。



『っーーー。』


驚いて悲鳴を上げそうになった口元を両の手で必死に抑え、昨夜の記憶を少しずつ呼び戻す。


あの後、実弥さんの言葉に溢れ出す感情を止められなかった私は実弥さんの腕の中で声を上げて泣いた。そしてそのまま眠ってしまっていたようだ。


だから、今目の前に実弥さんのお顔が、、、



なんて不甲斐ない。




それだけでない。

だんだんと覚醒していく頭は、昨日の記憶を鮮明に思い出す。




あぁ。私は何てことを、、。




自分が死んだ人間であったこと、この世界にいていい証がなにも無いこと。何もかもを実弥さんにぶつけてしまった。


私を拾って、救ってくださったというのに。





しかし、その後の実弥さんは何と言っただろうか。こんな、こんな私を、、、



『ーーーっ///』




耳元で、優しく囁かれた言葉を思い出すと顔に熱が溜まって仕方ない。

そ、そんな歳でもないのに!




カァと熱を持つ頬を両手で包んで下を向く。






「相変わらずころころ表情変えやがってェ。忙しい奴だァ。」


『っ!?お、起きていらしたので、すか、、』



悶々としているところに突然降ってきたその言葉に、驚いてばっと顔を上げるとニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた実弥さんの姿。


その言葉から、ずっと見られていたのかと察し再び顔に熱が溜まる。


その顔に伸びてきたのは実弥さんの手。


熱くなった頬に添えた実弥さんの手はいつも通り傷だらけで、それがたまらなく愛おしいなんて感じる。


その手が頬を伝い顎に添えられればくいっと顔を上げられる。


目があった実弥さんの顔も同じように傷だらけで、同じようにとても愛おしい。



あぁ。好きだ。好き。実弥さんが好き。






『お、おはようござい、んっ、、』


「ん、はよ。」



何も言わない実弥さんに、最早意味のない挨拶の言葉を言おうとしたところに降ってきた口付け。


突然のそれに驚くも心地よく、溢れる愛おしさに酔いしれる。







「んな顔してっと襲っちまうぞォ。」


『はあっ!?な、何言ってるんですか!!』


「おー。怖い怖い。」




慌てて距離を取るとまたニヤリと見せる笑み。


その姿に、この朝の幸せに、昨日までの憂鬱な気持ちは嘘のよう。



全てを受け止め、受け入れてくれた実弥さん。

私は、この人のために生きよう。

私の生きる理由は、この人だ。





「お前はそうやって気の抜けた顔で一生笑っとけェ。俺の隣でなァ。」


『、、っ。気の抜けた顔なんてしてませんー』



自然と溢れた笑みにくしゃりと頭を撫でられれば、降ってきた言葉に緩む涙腺。




「ったく。笑っとけって言った側から泣いてんじゃねぇぞォ。」


『っ、、すみません、、。やっぱり嬉しくて。』



何回目だろう、実弥さんの前で泣いてしまうのは。
両手で頬を包まれ、優しい指先が涙を拭う。

いつもいつも、こうして涙を拭ってくれる。




「そうかい。」


『はい、、実弥さん、その、』


「あ?」


『好きです。』


「っ。」


『大好き、です、、』


「お前なァ。」





再び降ってきた口付けは少しゆっくりと。

大好きなあなたに酔いしれて、いつまでもあたたかい季節が続くだろう。
くらりとする頭でそんなことを考えた。





2020.2.4


きみとのきせつ
一応(第一部)完結!です!!続きますが!

まずは、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!!!!!!!
最初から最後までキャラ崩壊、グダグダ展開グダグダ文書でしたがなんとか2人をくっつけて終わりにできました、、汗

恋人になった今後のお話は第二部または短編ページに更新していこうと思います!
これからもよければ読んでいただけると嬉しいです!
ありがとうございました!

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