不死川さん | ナノ

24.その手を取って



暗い、闇の中。


あぁ、またこの夢か。
なんて思いながら目の前の暗闇をぼぅっと見つめる。


次第に闇は晴れていき、見慣れた街並みが見える。





何度見ても慣れない夢に、夢の中だというのに息は荒くなり涙が溢れ出す。



怖い。怖い。逃げられない。




ただ夢から覚めるのを祈るようにきゅっと目を瞑れば次に来るのは身体を引き裂くような痛み。




『いやぁああぁああ!!!』



身体から血が吹き出る感覚。



『いや!いやっ!!たすっ、け、、て!!』



恐怖。






痛い。怖い。苦しい。





『たす、、けて、、、』




おもむろに手を伸ばすも、誰にも掴んでもらえない。



いつもそうだ。




わたしは、わたしは、、、





『たすけて、、、誰か、、』





必死で伸ばすにも誰にも掴んでもらえない手に、頭に浮かぶのはあの人の顔。


苦しい。会いたい。




痛みと恐怖に麻痺した頭はがぼんやりとぼやける。




視界は暗闇が覆い、深い闇に落ちていくのが分かる。


あぁ怖い。痛い。怖い。




その時、暗闇の中に見えた一筋の光。



いや、傷だらけの手。



『っ、、!!』




暖かなその手は、力なく伸ばしていた私の手をそっと握ってくれた。




あたたかい。


今度は暗闇を抜けるようにその手に引っぱられる。



誰の手か、誰の温もりか見なくても分かる。

夢の中だとしても感じることができた実弥さんの温もりに再び涙が溢れ出した。






ーーーーーーーーーーーー


「っ!なまえ!!なまえ!!!おい!!」


『、、、っ!?』



騒がしく名を呼ぶ声に目を覚ますと、目の前に見えたのは会いたくて会いたくてたまらなかったその人だった。



2020.1.23


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