不死川さん | ナノ

21.夜のあいだは



『、、あれ、、朝か、、。』



眩しい日差しに目を覚ます。

昨夜はどうやら泣きながら寝てしまっていたようだ。

泣いてこすりすぎた目は腫れているのか、少し痛む。

ご飯も食べずに自室に籠り、泣きながら寝てしまっていたようで、頭痛と重たい身体。




『実弥さん、、、。』



一昨日の夜に任務に出た実弥さんは、どうやらまだ帰っていないようだ。
いつもならとっくに帰ってきているはずなのに。




『頭、痛い。はあ、、』



寝て起きても変わらない現実。


元の世界の私はいない。


心のどこかで、いつかまた家族や友人達に会えるのではないかと思っていたものが一気に壊れきってしまった。



夢で思い出した、トラックに跳ねられた際の痛み、恐怖、僅かに残る、自身の血が吹き出る感覚。


思い出すたびに再び溢れ出す涙。

苦しい。








「なまえー!!実弥カラダ!!」



『わっ!あ、鴉さん。』



溢れた涙を必死で拭っていると、実弥さんの鴉が勢いよく屋敷に飛び込んできて驚く。

どうやら手紙を運んできてくれたようだ。



『実弥さん、、。』




ーーー長期任務になった。蝶屋敷にいろ。終わり次第迎えに行く。



手紙には、いつもの綺麗な字でそう書かれていた。


長期任務、という知らせにまた溢れ出してしまう涙。



『、、っ。大丈夫だよ。泣いてる事、実弥さんには言わないでね。絶対ね。』



私の涙に、驚いたような困ったような表情で私の膝に寄り添ってくれた鴉の頭を撫でる。



「シカシ、、、」


『心配かけたくないの。お願いね。』


「ウム、、、」






ーーー承知いたしました。ご武運をお祈りいたしております。




短く返事を書いて鴉の足に縛り、再び頭を撫でる。





快晴の空に飛んで行く鴉を見送って、はあ、とため息をつく。



堪えようのない不安に、ぐっと唇を噛んで空を見上げた。



2020.1.15



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