20.お日様どうか
『はぁ、、、。』
唇にそっと手を当てては、昨夜のことを思い出し頬をを染める。
昨夜のことはあまりよく思い出せない。
花火が上がりきったのを見計らったかのように飛んできた実弥さんの鴉によって任務を告げられた実弥さんは、私を家まで送った後そのまま任務に行かれてしまった。
帰りの道ではお互い無言で、ただ繋がれた手から伝わる温もりを感じていたのを覚えている。
『なんで、私にキスなんてしたんだろう、、。』
昼過ぎまで干した布団はお日様の光を受けぽかぽかとあたたかい。
実弥さんの布団を取り込むためにきゅっと抱きしめると彼の匂いがほんのり香ってはまたくらくらとする。
もはや彼のことしか考えられない頭。どうしてくれようか。
ぽかぽかとあたたかい布団と心地よい陽気に、昨夜考えすぎて眠れなかった私のまぶたはそうっと下がって来るのがわかる。
あぁ。少し、少しだけお昼寝してもいいよね。
心地よい陽気の中そっと眠りに落ちた。
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『あれ、ここ、、、』
目の前には見慣れた街の風景。
信号がある大きな交差点。
行き交う人々や車に、賑やかな夜の街。
右手にはお気に入りのバッグ。左手にはスマホ。
液晶を覗くと大好きな友達とのトーク画面。
元の世界だ。
『あれ、これは夢?』
はたまた、今まで見ていたのが夢だったのか。
そういえば、どうして私はあの世界に行ったんだっけ、、。
目が覚めて、実弥さんがいて、拾われた。
そこまでは覚えている。でも、その前が、、、
私は、元の世界にいて、、、
「なまえーーー!!!」
呼ばれた声に振り返ると、焦った声で私の名を呼ぶ友達がいる。
その時だった。
『え、、、』
交差点には、何やら動きのおかしなトラック。
あろうことか、そのトラックはこちらに向けて突進してきたのだ。
『え、え、あ、、、』
固まったように動かない体。
そうだ、思い出した、私は、わたしは、、、
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『死んじゃったんだ、、、っ、、』
涙とともに目を覚ますと、日が落ちかけたいつものお屋敷。
涙がつくのも気にせず、実弥さんの布団にきゅっとしがみつき、声を上げて泣いた。
2020.1.7
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