不死川さん | ナノ

18.みどり



『よし、できた。アン●ンマンだよ。』


「なにこれ〜」

「変なの〜」

『え!アン●ンマンじゃん!!あの!ほら!』

「変なお姉ちゃん。行こ〜」

『えっ!あっ、、、』





目の前を去っていく子どもたち。

急に絡まれたので子どもにはアン●ンマンだろ!と地面に絵を描いたもののうけなかった。

そうか、この世界には彼は存在しないのか、、。





はあ。と息をついてしゃがみこみ膝に顔を埋める。

実弥さんが去ってしまってから数時間経過した。



辺りはすっかり暗くなり、出店もちらほらと店を畳んでいる。




寂しいなあ。


なんて思っても仕方ないのになあ。


実弥さんから貰ったお金も使う気にならず、浴衣とともに昨日いただいた巾着に入れたままだ。




かなり時間が経過しているように感じるが、なにかあったのだろうか。


怪我などしていないだろうか。



だんだんと暗い考えが頭をよぎり、目をきゅっと瞑る。




実弥さんに会いたい。

一緒にお店を回りたかった。



いや、待てよ。別に実弥さんは私とお祭を回りたいなんて思ってないのでは?

鬼が出なかったところで、警備が必要だし、店を回るのは私一人だったのでは、、?

なんならこのまま戻って来ないのでは、、、?







「、、い。おい!!なまえ!!」


『っ!はい!!あっ!!』


「んなとこで寝てんじゃねェ。」


『ね!寝てませんっ!!』



そんな考えを巡らせていると、会いたくてしょうがなかった人が目の前にいた。

私の目線に合わせるため、しゃがみこんで顔を覗き込む実弥さんに、驚いて反応が遅れる。


そして何よりも実弥さんの顔が間近にあることに慌ててしまう。




「、、何かあったかァ。」


『あ、いえ、違うんです、その、アン●ンマンが通じなくて、いや、じゃなくて、!』


「一旦落ち着けェ。」


『はい。』



優しい手つきで背中を撫でる手に落ち着きを取り戻す。
いや、ほんとになに慌ててんだ。



「落ち着いたかァ?」


『はい、、実弥さん、会いたかった、です。』


「、、っ。うまく紛れてやがって手間取った。悪かったなァ。」


『い、いえ!ご無事でなによりです!!』



私の言葉に、驚いたように目を見開いた実弥さんは顔を背けて私の頭をぽんっと撫でてくれた。

謝る必要なんて何もないのに。



『お疲れですよね、帰りましょうか。』



先に立ち上がって差し伸べてくれた手で私の手を引っ張って立たせてくれた彼ににそう告げると、なんだか考えるような素振りをしている実弥さん。



『あの、、、』


「行くぞォ。」


『えっ、!』



沈黙に堪らず声をかけると、再び私の手を取った実弥さんはずんずんと店の方に歩いていった。





半ば引きずられるように連れてこられたのは今まさに店仕舞いを始めようとしている小間物屋。


髪飾りがメインのようで、派手なものからシンプルなものまで、色とりどりでかわいらしいものがたくさん並べられていた。



そのどれもがとても可愛らしく、思わず目を見開いてしまう。






「店主、一番モノのいいのを出してくれェ。」


「やあやあにいちゃん、お目が高いねぇ。
、、、おや、鬼殺隊の方かい?」



質問には無言でじっと店主をみつめる実弥さんに怯むことなく店主は続ける。


「昔知り合いが鬼殺隊の方に助けられてね。しょうがねぇ。にいちゃんにはとっておきを出してやるよ!!」



そう言って店主は何やら奥からゴソゴソと箱を出してきた。そしてその箱を私たちの前に出すと、蓋を開けた。




『わっ、かわいい、、』


「だろ〜、俺の嫁さんが作ったんだ!ここにあるのは全部そうだが、この中にあるのは特にとっておきさ!」


箱の中には色とりどりのガラス細工で作られた髪飾り。


そんなに派手、豪華、というものではないが、シンプルでとてもかわいらしい。



赤、青、緑、紫の色をモチーフとしたものがそれぞれ一つずつ丁寧に仕舞われている。



箱の中身に見とれていると、無言を続けていた実弥さんがそっとこっちを見た。



「買ってやる。この中から選べェ。」


『えっ!!!そんな!いや!できません!』




突然口を開いたと思うと、出てきた言葉に目を見開いて首を振る。

買ってやる。だなんて、私なんかに、、お祭に連れてきてもらっただけでもありがたいというのに。


頭の上で、実弥さんのため息が聞こえたが気にしない。




「おいおいねえちゃん。男の申し出を断るもんじゃねぇぞ〜!!ほら、これなんか似合うぞ!!」



そう言って今度は店主が勧めてくる、、。

私に似合うと言って渡されたのは青色のガラス細工がついた髪飾りだ。

確かに、かわいい。





「チッ。青はダメだァ、、これをもらう。」



そう言って、実弥さんが手に取ったのは緑の髪飾り。



「まいどあり!!青もいいと思ったけどなあ!!」



「おら。行くぞォ。」



『えっ!!あ、さ、実弥さんっ!!』





目の前のやり取りについていけず呆然と立ち尽くしていると、店主から品物を受け取った実弥さんにまた手を取られる。





決して安いものではなかった。

この人はどうしてこんなにも優しいのだろう。


ずんずんと手を引かれながら、この世界に来てもう何度も浮かんだ疑問を再び頭に浮かべるのだった。




2020.1.4



文書が、うまく、書けない、、、!
実弥さんかっこいい、。
祭り編もうちょっと続きます!

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